【後編】漁業の町・長崎市外海。変わってゆく伝統食の姿。
昔から小舟でイワシを獲り、段々畑で麦やさつま芋を育ててきた。この地に息づく食、いつまで味わえるだろう?
撮影・青木和義
「規格外の魚を海に捨てるのを見て、加工して役立てようと決めた」
「漁の多いとき規格外の売れない魚をバンバン海に捨てるのを見てもったいないと思ってね」
漁協の女性部長を務める樫田喜美代さん(64)は、捨てる魚を活用しようと考えた。「刺身にした残りの部分にも、身がたっぷり残っていますよ。すり身をカマボコや天ぷらにすればいいじゃないですかと提案してから、もう20年以上になりますね」
初めは理解が得られなかったが、やがて一緒に働く女性が増えた。「ものを大事にする。捨てるものを工夫して使う。家でもできることを仲間とするのが楽しみです」
「水揚げした活魚、鮮魚はこの地域の人が買っていって食べるんです」
漁港で船を待っていたら、ウニを積んだボートがやってきて水揚げした。ムラサキウニだ。
「人それぞれですけど、夜の2時、3時から漁に出てお昼ごろ戻ってくる漁師さんが多いです」
その日に獲れた魚介類が夕飯のおかずになる。一部は長崎魚市場から県外にも流れると、漁協の浜崎隆さんが教えてくれた。
「天然の鯛が今日は揚がりました。水イカも何週間ぶりにか獲れましたよ。水揚げした魚介類は、けっこうすぐに売れてしまうんです」
地産地消がそこまで定着しているなんて食の理想郷かも。
『クロワッサン』946号より