『大人のコミュニケーション術 渡る世間は罠だらけ』辛酸なめ子さん|本を読んで、会いたくなって。
同窓会はハードルの高いイベントなのです。
撮影・青木和義
コミュニケーション力、略して“コミュ力”。本書は、人づきあいを苦手としてきた辛酸なめ子さんが、人間不信妄想脱却を目指して自らのコミュ力を高めようと奮闘する様を描いたエッセイだ。
「本にまとめるまでに2年強かかりました。日々コミュニケーションについて考察していたおかげで、少しずつですが対人関係も円滑になってきたようです。この本を出したのがきっかけでラジオ番組へのお誘いがあり、否が応にも会話をしなければならない状況にも鍛えられましたが(笑)」
飲み会やパーティ、同窓会など人の集まる場をはじめ、友人・知人たちとの処世術、LINEやTwitter、InstagramといったSNSなどにおけるコミュ力向上術を事細かに紹介。もちろん、自嘲的で、どこか切なさを覚える辛酸なめ子節が全編に冴え渡っている。
「同窓会って、人生に成功した人じゃないと来てはいけない空気を感じていました。私の場合、中高一貫の女子校で、ひとりひとり前に出て近況報告させられるのが慣習なんです。それが恐怖で自分の番が近づくとトイレに籠ってやり過ごしたり……。別の同窓生の集まりでは見栄を張って5万円の靴を買って履いていったところ、ひどい靴擦れになって、ひとりトボトボと帰宅したり……。これまで何度、同窓会の“黒歴史”を更新したことでしょう」
Facebookは未登録だが、SNSもあれこれと試してみた。でも、LINEやInstagramで知人たちの自慢写真合戦を見せられているうちに、「“いいね!”をするたびにエネルギーが吸い取られている感じがして、他人の人生に振り回されないで、自分の人生を送らなければ」と、ハッと気づいたそうだ。
そんな辛酸さんの心を癒やしたのが、「Yahoo!知恵袋」という検索サイト。
「かつてのおばあちゃんの知恵袋と、何でも相談できる友人を合わせた存在になりつつあります。顔も知らない同士なのに、親身な回答がもらえると好感が持てて、自分も何か役に立てる質問がないかと眺めるようになりました。いつしかこのサイトに人情味すら感じるように……。SNSで自分を虚飾するのとは違う、真っ当なコミュ力を養ってもらえると思います」
自分のコミュ力は、まだ偏差値42くらいと謙遜する辛酸さん。
次なる目標は?との質問に。
「言葉がいらないコミュニケーションを目指したいですね。テレパシーとか霊能力を高めて!」
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