「行動別」収納で、手間なく、合理的に。
撮影・徳永 彩 文・石川理恵
「建築家と家を建てることが、子どもの頃からの夢でした」と話す宇高有香さん。夫婦で力を合わせ、今から7年ほど前に、念願のマイホームづくりをスタートさせた。当時の住まいでは、仕事と育児の両立に精一杯で、部屋を片づけることもままならない毎日。「素敵な家を建てたからといって、素敵な暮らしができるとは限らない」という現実に気づき、家を設計するにあたり、収納の仕組みづくりをサポートする専門家にコンサルティングを依頼した。変形狭小地に建てたスキップフロアの一軒家は、理想どおりのおしゃれな空間だけれど、うまく物の置き場所を決めなければ、上下階をムダに行き来するはめになる。とくに忙しいのは、朝の時間帯。そこで、玄関を入ってすぐの畳スペースに、出かける時に必要なものをすべて集めることに。
「収納は“物別”ではなく“行動別”で考えようと思いました。だからこの同じ棚の中に、上着にエコバッグ、虫除けスプレーから充電済みのデジカメまで、出かける時に使うあらゆるジャンルの物を収納しています。目指したのは、忘れ物のない収納。自分の行動に合わせるのが大事なので、私のハンカチは、実は、洗い終わった直後にバッグインバッグの中に入れています。そうすれば、ハンカチ置き場にしまう手間と、出かける前にバッグインバッグにしまう手間が省けますから」
コンサルティングを受けたことを機に、自らも整理や収納の仕組みづくりについて勉強し、資格を取得した宇高さん。「行動の流れに沿って収納を組む」という視点で考えると、家じゅうのあらゆる物の置き場所が、思い込みから解放されていった。
たとえば、子どもたちが歯磨きをするのは、夜は2階の洗面台だけれど、朝は朝食を食べた後にキッチンで磨くのが自然な流れ。だから歯ブラシは、2階の洗面台と1階のキッチン、両方に用意している。また、下着はお風呂上がりに替えるから、脱衣所が定位置。小さなかごに、“人別”ではなく“家族1日分”をしまっている。毎日の洗濯を考えると、洗濯物をしまう時、人別だと家族それぞれのかごにしまわなくてはいけないのに対し、家族1日分ならばひとつのかごに人数分を1回しまえばすむからだ。
「ムダを省こうと考えて、上の子のランドセル置き場は玄関なんです。毎日のことなので、わざわざ上の階に持っていかなくてもいいかなと」
許容範囲内であれば「出しっぱなしでもヨシ」とした。固定観念で決まりごとを作らないこともスムーズな動線で暮らすための手段のひとつだ。
宇高有香さん●ライフオーガナイザー。暮らしの提案をする「ウチカラ」主宰( http://www.uchikara.net )。著書に『子どもと暮らすラクに片づく部屋づくり』(辰巳出版)。
『クロワッサン』934号より
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