『つぶやくみつる』やくみつるさん|本を読んで、会いたくなって。
予定通りに行かないことこそ、旅の醍醐味。
撮影・武方賢治
時事ネタの一コマ漫画や四コマ漫画、テレビのコメントをいつも目にしているけれど、やくみつるさんの随筆をまとめた本は思えば初めて見たかもしれない。
「文章を書くのは苦痛ですから、こういう本は後にも先にもこれだけでしょう。じゃあ漫画を描くのが好きかっていうと、そっちも好きじゃないんですが(笑)」
森羅万象、朝のゴミ出しから旅行先での見聞、テレビで見たことや世相についての意見がぎっしり詰まった分厚い本である。全部で359ページ、厚さ約3cm。
「インターネットもツイッターもやりませんが、疑問に思うことやおかしいと感じることに声を上げているので『つぶやくみつる』という題名を出版社の方がつけてくれました。どうも私はツイッターをやっているイメージがあるようなんですが、実際やったらすぐに炎上してしまうでしょうね」
炎上といえばインタビューの前前日に読売テレビの番組『ミヤネ屋』でやくさんがポケモンGOについて述べた意見が、そのとき炎上まっさかりだった。
「言葉が一人歩きするときは引用が不正確になりますね。私は意図して、興じるという言葉に“う
ち”という接頭語をつけて『ポケモンGOにうち興じている人を心の底から侮蔑する』とコメントしたのですが、引用される際は“うち”が外れているでしょう?」
確かに、うち興じると興じるでは意味が違う。強める“うち”が外れると、ポケモンGOに興じる人をみんな侮蔑するニュアンスになってしまう。
「基本そうなんですけどね(笑)。テレビのコメントは時間の制約もあって思ったことが全部は話せません。漫画も明快に表現するために削ぎ落としている部分がある。その点、文章だと全体の経緯から細部まで詳細にまとめておくことができていいですね」
そう、古いところでは小泉訪朝から大相撲の朝青龍問題、新しいところでは東京五輪やアベ政治のドタバタまで、やくさんが漫画やテレビのコメントで長年にわたり表現してきたことの顛末や真意があらためて読みとれる。それが、この本の面白いところ。
毎年恒例の『ユーキャン新語・流行語大賞』の選考委員を務めているやくさんに、今年注目の言葉について聞いてみた。
「うーん、ネガティブな流行語が多くて選ぶのが難しいかもしれません。そしてもしポケモンGOが選ばれてしまった場合には、私はどの面下げて顕彰式に出席したらいいかわかりませんね(笑)」
広告