『渋谷パルコの復活 なぜ危機から再生できたのか?』著者 平松有吾さんインタビュー ──「渋谷を彩った20年のブランド史の一面も」
撮影・中島慶子 文・一寸木芳枝
2025年度の年間テナント取扱高が509億円を達成し、過去最高を更新した渋谷パルコ。その立役者のひとりが本書の著者、平松有吾さんだ。500億円は、郊外型の大規模商業施設やターミナル駅直結の駅ビルと肩を並べる規模だ。
「駅から徒歩10分という立地条件、200以下のテナント数、それも“グローバルニッチ”なラインナップで達成できたというのは本当に驚きです。でも同時に、やはり商業施設はプランニングや携わる人間の動きひとつで大きく変わる、というのを実感しています」
“グローバルニッチ”とは、渋谷パルコが掲げる売り場づくりのキーワード。幅広く誰もが来るわけではなく、“特定の誰かが、強く好きなものに反応して訪れる”、そんな世界一ユニークで面白い商業施設を目指してきた。
本書では平松さんが新入社員として入社した2000年代から駅ビル全盛の2010年代を経て、2019年の“新生”渋谷パルコとしてのリニューアルオープン、コロナ禍、そして現在に至るまでの舞台裏を現場の視点で語る一冊だ。
「商業施設がどういう流れでできているのか、ブランド誘致の裏側やフロアの構成、オペレーションなど、“身近な存在なのに知らなかった”という人も多いようで、幅広く読まれているようです」
ニンテンドートウキョウとグッチが同じ商業施設内に共存するという、唯一無二の“とがった”テナント戦略、コム デ ギャルソンを率いる川久保玲さんとの禅問答のような出店交渉など、フロア構成が決定するまでのプロセスは、ヒリヒリする場面も。
出店交渉のシーンに登場するブランドはすべて実名
「掲載の許可取りをお願いした時は、半分ぐらいはNGかと心配でしたが、杞憂でした」
デザイナーやブランドの成り立ち、時代背景などが解説された128に及ぶ脚注も読み応えたっぷりだ。
今年3月には自身の会社を立ち上げ、現在はアソシエイツプロデューサーという肩書で渋谷パルコのディレクションのほか、福岡空港や京都の藤井大丸のリニューアルプロジェクトにも携わる。
「商業施設はコミュニティとしても重要な位置を占め、その街の文化を作る存在でもあります。であればこそ、それを作れる人材の育成が社会全体でもっと広がってほしい。そのために自分の経験が少しでもお役に立てたら」
今、商業施設を取り巻く環境は厳しい。数が増える一方でどこも似たようなテナント構成になり、競争は激化。西武渋谷店の閉店も大きなニュースとなった。
「渋谷西武の閉店は、心情的には残念です。でも正直、人口減が進む今の日本に商業施設の数は多すぎて、ただ延命するだけでは未来は苦しい。これから先は、その街で本当に求められる施設だけが残り、数の適正化が進むと思っています。渋谷はその時代が最も反映されやすい街。渋谷パルコも進化し続けなければなりません」
『クロワッサン』1168号より
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