『エイダンをさがして』デイヴィッド・レヴィサン 著 三辺律子 訳──ファンタジーの定番を現実側から描いた作品
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
ある日突然、12歳の兄、エイダンがいなくなった。町中が大騒ぎして数日経った夜、ひとつ下の弟、ルーカスが屋根裏部屋に行くと、なんとパジャマ姿のエイダンが。彼のそばには青い葉っぱが落ちていた。ルーカスだけにこっそり教えてくれたことによると、屋根裏部屋の洋服ダンスを通して不思議な場所に行っていたのだとか。
まるで『ナルニア国物語』ではないですか。だが本作は、少年が異世界に行くというファンタジーの定番ではなく、残された側が主人公で、異世界から帰ってきた後の現実を描く物語なのだ。
当然、大人たちは何があったのか知りたがる。マスコミは面白おかしく書き立て、本気で心配していた人々は冷たくなり、学校ではからかわれるエイダン。本当のことを話しても誰も信じるはずがないと口を閉ざすエイダンを守ろうと、ルーカスは懸命だ。葉っぱについて話すルーカスに、エイダンが「だから、おれの言うことを信じているのか? たった一枚の葉っぱで?」と訊くと、弟は「ううん。信じているのは、お兄ちゃんがそれを信じているから」。この台詞に泣きました。
ヤングアダルト小説だが、大人の振る舞いについて学びの多い一作。
『クロワッサン』1168号より
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