【手みやげをひとつ】樫舎「みよしの(葛焼き)」──『中川政七商店』十四代目社長・千石あやさん推薦
撮影・メグミ 文・梅原加奈
享保元(1716)年に奈良で創業し、麻織物問屋をルーツに持つ『中川政七商店』。現在は全国の工芸や手工業に着目し、衣食住にまつわるさまざまな生活の道具を扱う。現在十四代目となる社長を務める千石あやさんは、入社後に奈良に移住。そして、この地に古くから根付く職人文化に感銘を受けたという。
「前の社長である中川淳から“おいしいお菓子があるんだよ”と教えてもらい知ったのが『樫舎』。創業は2008年と奈良の歴史からすると比較的新しいですが、春日大社や薬師寺、東大寺なども御用達のお菓子屋さんです。店主の喜多誠一郎さんは“職人は素材を吸水、加熱、加糖するだけで味自体は作れない、だから和菓子は素材が命”と語り、素材が持つ力を究極なまでに活かすことを研究し、精魂を傾けて菓子作りをされている。菓子はいずれも重くなく、軽くいただけるけれど、滋味深くバランスがすばらしい。私たちが茶道文化の入り口になればとはじめた喫茶『茶論』でも、『樫舎』さんのお菓子をお出ししているんですよ」
奈良らしさを伝える菓子として、手みやげに持参することも多いそう。
「奈良吉野の本葛と丹波小豆のこし餡だけでできた葛菓子〈みよしの〉は、まず味わってほしい一品。奈良に初めていらした方へ、また他の土地へ伺う際に持参することが多いです。見た目は少し地味だけれど、味わうと深い甘みと口の中でほどける優しい食感。それがなんとも奈良っぽい。京都や神戸に比べると控えめに感じられても、一歩踏み込んで知ると長い歴史があり人もおおらかで居心地がいい。奥ゆかしい魅力を持つ奈良は、まさに〈みよしの〉のようだなと思います」
四季の移ろいを映す、主菓子も。
「春夏秋冬、いにしえから変わらない季節を描いた美しい生菓子。お菓子で奈良の景色をお裾分けできるのも素敵です」
樫舎(かしや)
奈良市中院町22-3 TEL:0742-22-8899 (営)9時〜18時、無休。写真左のみよしの(葛焼き)は1個410円。一般に夏菓子とされるが、『樫舎』では一年中地元の味として提供。通販可。主菓子は季節や気候に合わせ厳選し、一番食べごろの素材を使った菓子を用意。写真右は初夏の主菓子〈青梅〉(432円)と〈雨後の華〉(464円)。
『クロワッサン』1166号より
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