『千の目が光る森』フランシス・ハーディング 著 エミリー・グラヴェット 絵 児玉敦子 訳──森に覆われた世界で冒険する一人と一匹
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
日除けや冷え対策にも便利なシアーカーディガン
コットン100%で軽くて涼しい素材ながら、日差しや冷房の冷えからもしっかり守ってくれるカーディガン。これから暑くなる季節に持っておきたい、心強い1枚です。
フランシス・ハーディングは新刊が出ると必ず読む作家だ、ということはこの欄で以前も書いたと思う。驚異的な想像力で構築された世界を描き切るダークファンタジーの書き手である。本作はイラストもたっぷりの比較的短い一冊。挿絵を手掛けるのはケイト・グリーナウェイ賞受賞の人気絵本作家、エミリー・グラヴェット。その絵は美しく愛らしいのにハーディングらしい不気味さも伝わってくる。素晴らしいタッグだ。
森が地上を覆いつくし、人間は城壁のような建物の内側の空間で暮らす世界。その一角の集落で暮らす少女フェザーは、ある時、〈よそ者〉の男に騙されて貴重な望遠鏡を盗まれたうえ、ペットのスリークとともに外の世界へ突き落とされてしまう。〈よそ者〉を追いかけて森に足を踏み入れたフェザーには、思いもよらぬ冒険が待ち受けている。それはウロコのついたフェレット、スリークにとって同じだ。
人間と自然や動物との関係の難しさが伝わる内容。でも説教臭くなく、エンタメとして楽しませるうえ、ラストには希望もある。若い世代に向けたこうした真摯な本って、作者の大人としての責任と矜持を感じる。目が覚める思い。
『クロワッサン』1163号より
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