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『真夜中のパリから 夜明けの東京へ』著者 猫沢エミさん 小林孝延さんインタビュー ──「喪った穴は消えないけど、新たな再生があるから」

東京とパリ、距離と時差を超えて交わされる喪失と再生をテーマにした往復書簡『真夜中のパリから 夜明けの東京へ』──本を読んで、会いたくなって。著者の猫沢エミさん、小林孝延さんにインタビュー。

撮影・中村ナリコ 文・クロワッサン編集部

『真夜中のパリから 夜明けの東京へ』著者 猫沢エミさん 小林孝延さんインタビュー ──「喪った穴は消えないけど、新たな再生があるから」

右: 猫沢エミ(ねこざわ・えみ)さん ミュージシャン、文筆家。福島県出身。2002年に渡仏、2007年までパリに住んだのち帰国。2022年、再び2匹の猫とともに渡仏、パリ在住。著書に『猫と生きる。』『イオビエ』など

左: 小林孝延(こばやし・たかのぶ)さん 編集者。福井県出身。猫沢さんとは『天然生活』を創刊した際に連載を依頼した縁。その後『ESSE』編集長を経て独立。著書に『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』

東京に住む小林孝延さんとパリの猫沢エミさん。本書はかけがえのない存在を喪った二人の往復書簡。

猫沢エミさん(以下、猫沢) 私が最初のパリ移住から東京に戻っていた頃に、SNSで小林さんのパートナー、薫さんの訃報を知りました。15年ほどのブランクがありましたがメッセージを送り、また交流が始まって。絶版だった拙著『猫と生きる。』の復刊を小林さんから提案された直後に、私が猫のイオを見送ることになりました。その頃、小林さんとよく一緒に飲みに行きましたが、お互いの苦しみは充分わかっているから、言葉で語らずお酒を飲んで、ただ弱々しく笑うだけ。今回の試みは、そのとき互いに抱えていた思いを言語化したものと言えるかもしれません。

小林孝延さん(以下、小林) 僕が『つまぼく』を出す前ですね。

猫沢 その後、ご著書を読んで「そうだったのか」と思うことも多かったけど、当の小林さんの心情についてはほとんど書かれてない。死を扱った拙著が自分の傷を自分で開くような痛ましさがあるのと対照的で「すべてを語れば人が癒やされるわけじゃないんだな」と思いました。もう少し小林さんの気持ちが知りたいとも。だからこの書簡では、当時語らなかったことを聞ければと思って。

大切な誰かを亡くしても、残された自分の人生は続くから

1通目の書簡で猫沢さんはこう書いている。

〈(小林さんが)見送りの日々を振り返りながら「俺は、冷たい人間なのかもしれないなあ」と呟いたのを、すごく印象的に覚えています。〉

小林 家族が病気になると「こんないい先生がいるよ、療法があるよ」とDMがいっぱい来るんです。もちろん善意なんだけど、試さないのは冷たい人間だと言われる。

猫沢 わかります。私もインスタのDMがたくさん来ました。

小林 SNS上では、僕のことを「かわいそうな人」と思っている人が少なくないんです。少し楽しそうにするとコメントで「小林さんが変わってしまった」。それで、家族や大切な人を亡くした人が、その後の人生をどう取り戻すかということを書けたらと思ったんです。

猫沢 死というのは避けられない。私のパリ移住後も何人も友人が亡くなりましたし、この年齢になると死と隣り合わせだと実感する。それでも自分の番が来るまでは生きていかなければいけないわけで。

小林 猫沢さんは〈傷も心に空いた穴も、決して癒えたり消えたりはしない。ただ、その跡に新しい何かが芽吹いて緑地化していく〉と書いていましたね。

猫沢 私、死ぬまでに穴だらけになるなと思いました(笑)。80歳くらいまで生きたら、ドット模様で自分の姿が見えなくなるんじゃないか、なんて。空いた穴は塞がらないけど様々な形で再生する。自分の喪失と再生はどんな形なんだろう。この本がそれを考えるきっかけになってほしいと思います。

『真夜中のパリから 夜明けの東京へ』 東京とパリ、距離と時差を超えて交わされる喪失と再生をテーマにした往復書簡。 集英社 1,870円
『真夜中のパリから 夜明けの東京へ』 東京とパリ、距離と時差を超えて交わされる喪失と再生をテーマにした往復書簡。 集英社 1,870円

『クロワッサン』1156号より

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