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『それいけ!平安部』著者・宮島未奈さんインタビュー「学生時に叶わなかった理想の部活の物語」

著者4作目となる待望の新刊。県立菅原高校・平安部を舞台に、5人の高校生が自分の居場所を見つける青春小説。『それいけ!平安部』──本を読んで、会いたくなって。著者の宮島未奈さんにインタビュー。

撮影・幸喜ひかり 文・一寸木芳枝

宮島未奈(みやじま・みな)さん 1983年、静岡県生まれ。京都大学文学部卒業。39歳で小説家デビュー。『成瀬は天下を取りにいく』で坪田譲治文学賞、2024年本屋大賞を受賞。他の著書に『成瀬は信じた道をいく』『婚活マエストロ』。滋賀県大津市在住
宮島未奈(みやじま・みな)さん 1983年、静岡県生まれ。京都大学文学部卒業。39歳で小説家デビュー。『成瀬は天下を取りにいく』で坪田譲治文学賞、2024年本屋大賞を受賞。他の著書に『成瀬は信じた道をいく』『婚活マエストロ』。滋賀県大津市在住

滋賀県大津市を舞台に、他人の目を気にすることなくまっすぐ生きる高校生、成瀬あかりを描いたデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』から2年。宮島未奈さんの最新刊は、再び高校生が主人公だ。今回の舞台は部活動。それがタイトルにもなっている平安部だ。

「聞いたことのない部活にしようと考えた時に、ひらめきのように浮かんだのが平安部。昨年の大河ドラマも舞台は平安時代でしたが、それはまったくの偶然なんです」

部を立ち上げた平尾安以加は、活動内容に“平安の心を学ぶ”を掲げるが、本当の理由は〈これまで学校で居場所がなかったから、高校に入ったら自分で居場所を作ってみたくて〉と話す。

「私も学生時代、学校に居場所がありませんでした。一応、文芸同好会に籍を置いていましたが、活動はたまにで、ほぼ帰宅部。とにかく毎日、一刻も早く帰りたいと思っていて、小学生の弟よりも先に家にいたほど(笑)。かといって家が好きだったわけでもなかった。部活は学校の一部かもしれないけれど、高校生にとっては貴重なサードプレイス。だから、この作品で描いた平安部は、部活動の思い出が全くなかった私の理想や願望の一つの形でもあります」

物語は部として認められる定員5人を集めるところから始まる。“平安顔”の主人公の栞、元サッカー部の大貴、1学年先輩で元百人一首部の幽霊部員だったすみれ、そして安以加の幼なじみであるイケメン、幸太郎。ぎりぎりでなんとか集まった個性豊かな顔ぶれも本作を面白くしている理由だ。

「書いていて一番楽しかったのは、現代における光源氏として設定した光吉幸太郎。現実には、こんな無敵のヒーローでキラキラしたイケメンは存在しないかもしれないけれど、ブレないキャラだからこそ、楽しかった」

平安も令和も人の悩みはそう大きく変わらないと思う

部員らは手探りで“平安の心を学ぶ”うちに、ひょんなことから蹴鞠を始めることに。練習に励むにつれ、5人の絆は深まり、仲間として結束が高まっていく。令和の高校が舞台なら、SNSやグループチャットによる陰湿なトラブルがエピソードとして出てきてもおかしくないように思うが、これまでの宮島作品同様、本作にもそういった心がしんどくなる場面は出てこない。

「生きているだけで嫌なことはたくさん起こる。だから、たとえフィクションの世界でも私の作品では書かなくていいと思っています」

だから安心して、平安部とともに純度100%の青春を追体験してほしい。気づけば6人目のメンバーとして、平安の心を学んでいる自分がいるはずだ。

「成瀬シリーズのファンの方が読んで楽しい作品にしようというのは、頭のどこかで意識していました。でも私としては、成瀬以外の青春小説も書けるんだ、という新たな引き出しを知ってもらえる作品になったと思っています」

著者4作目となる待望の新刊。県立菅原高校・平安部を舞台に、5人の高校生が自分の居場所を見つける青春小説。 小学館 1,760円
著者4作目となる待望の新刊。県立菅原高校・平安部を舞台に、5人の高校生が自分の居場所を見つける青春小説。 小学館 1,760円

『クロワッサン』1142号より

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