眺めて幸せ、贈って「お福分け」【歴史ある神社仏閣の門前名物】
撮影・青木和義 イラストレーション・松栄舞子 構成&文・河野友紀
取り寄せれば参詣気分、歴史ある神社仏閣の門前名物。
門前名物とは
社寺の参道に並ぶ甘いものといえば、100年以上前から参拝者の楽しみごとだった模様。
「門前茶屋の起こりは17世紀頃まで遡れるのですが、その後18世紀にかけて餅や団子、饅頭が名物として定着したと考えられています。江戸時代中期には今回紹介した梅ヶ枝餅や加美代飴などが人気に。古来小豆は邪気を祓うと考えられていたので、参拝後の厄落としという役割もあったのかもしれません。でもご利益を得るためにというよりは、当時の人もグルメは旅の大きな楽しみだったのだと思います。お参りに行く前に社寺の歴史を調べると、おのずと門前菓子の情報も出てくると思うので、見つけたらぜひ目を向けていただけるとうれしいです」
選者・大浦春堂さん
滋賀県・多賀大社|元祖莚寿堂(えんじゅどう)本舗の「糸切餅」
古くから”お多賀さん”の名で親しまれる滋賀の大社。長寿や無病息災の神様として知られ、元正天皇の病を治したという故事に因む絵馬”お多賀杓子”が有名。
起源は蒙古襲来、糸切りで悪霊を断つ。
甘さ控えめ少し塩気があるあんを、米粉を2度蒸してついた餅で包み、糸で短く切ったお餅。赤青の3本筋は蒙古軍の旗印を模している。10個入り900円。
香川県・金刀比羅宮(ことひらぐう)|境内の「加美代飴(かみよあめ)」
琴平町の象頭山(ぞうずさん)に鎮座し、長い石段の表参道が有名な通称”こんぴらさん”は、古くから海の神様として愛されている。五穀豊穣や病気平癒などのご利益も。
ほんのり柚子が香る、黄金に輝く扇形の飴。
御祭神にお供した五人百姓が作る柚子が香る飴。〝加美代〞は〝神代〞が元。参拝した人が買って帰り、付属の小槌で割ると御利益を周囲の人々に分け与えられると伝来。境内に五人百姓を受け継ぐ販売店が5軒あり、池商店、中田屋、箸方だるま堂、笹屋、中條商店が。10枚入り1,500円。
京都府・本願寺|亀屋陸奥の「松風」
念仏を唱えることで極楽浄土に往生できるという教えをもつ、浄土真宗本願寺の本山であり、世界遺産。国宝建造物が多数あり、癒やしの場としても人気。
江戸時代、本山に詣った証しだったことも。
織田信長と石山本願寺の合戦のさなかにこちらのお店の3代目が創製した品が始まりともいわれるこのお菓子。白味噌入り生地のもちっとした食感、そしてコクと塩加減がとても美味。16枚入1,200円。
京都府・ 伏見稲荷大社|総本家いなりやの「きつね煎餅」
朱の鳥居が美しい、全国の”お稲荷さん”の総本宮。奈良時代に御祭神・稲荷大神が山に鎮座し創建。もともとは五穀豊穣、今は商売繁盛の神として信仰を集める。
一枚一枚手焼き、ご利益のお裾分けに。
昔から五穀豊穣の神の使いとして親しまれてきたきつねを模したおせんべいは、参拝のお土産として人気。軽い口当たりと優しい甘み、ごまの香ばしさが魅力。箱もかわいくお土産に最適。10枚入り1,700円。
長野県・善光寺|丸八たきやの「そば餅」
日本最古の仏像といわれる一光三尊(いっこうさんぞん)阿弥陀如来を御本尊とし、創建以来約1400年の歴史をもつ。宗派の別なく受け入れる庶民の寺。
蕎麦の風味が広がる、寺御用達の味。
蕎麦粉、わらび粉、こしあんを共に練り上げ、蕎麦粉をまとわせたお菓子は、善光寺のお茶会にも使われる由緒ある品。一度途絶えた味をこちらが復活させた。広がる香ばしい蕎麦の香りとふわっとした独特の食感が魅力。6個入り780円。
福岡県・ 太宰府天満宮|茶房きくちの「梅ヶ枝餅」
学問の守護神として崇敬される”天神さま”は、全国に約1万2千社ある天満宮の総本宮でもある。御祭神は菅原道真公で、梅の名所としても知られる。
御祭神・道真公に由来する焼き餅菓子。
薄い餅生地であんこを包み、梅の花の刻印入り鉄板で焼いた餅菓子。左遷された道真公を見かねた老婆が梅の枝に粟餅を巻き付けて差し入れた故事が由来とも。冷凍5個入750円。
東京都・神田神社|天野屋の「明神甘酒の素」
創建当時は江戸の総鎮守、今は神田や日本橋など東京の中心の108町の氏神として信仰されている”明神さま”。商売繁盛や縁結びなど多数のご利益が。
英気を養ってくれる、昔ながらの甘酒。
江戸時代から鳥居の隣に店を構える老舗の甘酒は、店の地下6mにある〝土室〞で作る糀を使用。じんわりとした甘さが優しく、店頭では熱い甘酒、冷やし甘酒、夏場は氷甘酒も。350g 885円。
『クロワッサン』1132号より
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