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視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

ここさえ片づいていれば心穏やか、急なゲストにも慌てない。それはどこか、どう整えるか、プロに学びます。

撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・松本あかね

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

みつまともこさんの家の中心はキッチン、ダイニング、リビングがひと続きになった24畳のワンルーム。食事はもちろん、中学生の長女が宿題をしたり、フリーランスの夫が息抜きにギターの練習をしたり、家族がそれぞれの時間を過ごす場所でもある。さらに愛犬・あんずの遊び場も兼ねており、油断すればいつ乱れてもおかしくない。それがご覧のとおりすっきり片づき、心地よい空気が流れているのはいかなる技が?

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

「一つは生活の動線上でどこが目につきやすいのかを考えて、最低限そこだけは整えること。もう一つは部屋に入ったとき、最初に視線が向かう場所をきれいに設えておくことで、『整っている』という第一印象が持てるようにしておくこと」とみつまさん。

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

「お客様の目線も意識しますが、自分や家族も日々同じ動線を行き来するので、目につく場所は同じ。そこさえ整えておけば、『片づいている』というイメージが無意識に積み重なって、心も穏やかでいられると思います」

最初に目につく玄関には、余白を持たせてすっきりと。

「玄関が整っていると気持ちがすっきりする」とみつまさん。玄関は家の印象を決めるというけれど、実は住み手に及ぼす影響も大きい。「以前は靴箱の上にもディスプレイしていましたが、今はなるべく物を置かないようにしています」。例えば今日はあんず君を思わせる犬の置物と運気を呼ぶというさざれ石を入れた器だけ。「年齢を重ねるとともに、余白が欲しくなっているのかもしれません」

靴箱の上はDMなどを置きっぱなしにしがち。みつまさんはリビングの入り口脇にある扉付きの棚とダイニングテーブルの引き出しを仮の置き場所と決め、ポストから帰った足で直行。夜ゆっくり目を通すことにしている。

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

入り口から対角線の先にある場所を整える。

部屋に入って目線が最初に向かうのは、扉を起点とした対角線の先。「そこが整っていると、その手前が多少散らかっていても、ぱっと見にはわかりません」。みつまさんの家では目線は飾り棚とシンボルツリーに誘導される。実はドアの左手奥に犬用ケージが、ソファの裏側にギターのアンプも隠れているが、死角になっているため、第一印象に残るのは飾り棚や気持ちいいグリーンのほうというわけ。

飾り棚には娘が美術の授業で作ったマグカップやギャラリーでもらったZINEなどを飾っている。「家の人の趣味がわかるものを飾っておくと、気持ちの余裕が感じられて、見る人にも快いのではないかと思います」

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

季節の花や果物で、オープンキッチンを目隠し。

動線上、きれいにしておきたいポイントの中で最も気になる場所は? と聞くと「キッチン」という答えが。オープンキッチンだから常に丸見えのため、アイランドには大ぶりの花器を使い、花を飾ることにしているそう。「アイランドの上や奥のカウンターが少々ごちゃついていても、なんとなく花に目がいく効果を期待しています」。季節の果物を飾るのもおすすめだ。「これからの季節ならリンゴやオレンジなどを置いておくと、キッチンに色が加わっていい感じになりますよ」

キッチン用品を納めたオープン棚は、木製、ガラス製など、素材ごとに置く場所をまとめると、物量があってもすっきり見える。

水回りが片づいていれば、それだけで清潔感。

家族が使った後は「びっしゃびしゃ」の洗面所を毎朝、洗濯する前のタオルで拭くのが習慣。シンクの中まで拭き上げるのは、水滴を拭き取ると、不思議と心のざわつきがおさまるからだそう。「だから物はなるべく出しておかず、拭きやすい状態にしておくことを心がけています」。

歯ブラシやスキンケア用品、グルーミング用の道具などは、すべて鏡裏の収納にしまい、外に出ているのはハンドソープだけ。古くなったタオルやTシャツを切ったウエスをカゴに入れておき、落ちた髪の毛などをさっと拭いて捨ててしまう。

来客時にゲストを躊躇なく案内できるのも、心安らかでいられる理由だ。

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。

ダイニングテーブルに視線を集める工夫。

家族だけでなく、ママ友とおしゃべりなど、家族以外が座る機会も多いダイニングテーブル。

「余計な物を出しておかないのはもちろん、何かを飾っていると、こちらが『整えよう』としている意識が伝わります」。キッチン同様、果物をかごやガラス容器に入れるだけでかわいく見える。「わざわざ買ってくるというよりは、買ってきた果物をしばらく目で楽しむ、無理のない飾り方ですよね」

リビングでもローテーブルの上に読みかけの本をかごに入れておくだけで、目線の行き先を作ることができる。「そういう工夫で、例えばテレビ周りが散らかっていても、『整った家』という印象が残るのだと思います」

視線を上手に集める工夫で、一見「きれい」を実現する。
  • みつまともこ

    みつまともこ さん

    ディスプレイデザイナー、インテリアスタイリスト

    簡単にできるホームスタイリングや整理整頓術など、ディスプレイの技を活かし暮らしを整える方法を伝える。著書に『飾る暮らしの作り方』(翔泳社)。

『クロワッサン』1128号より

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