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プロが解説、災害用の自宅の備えに必要なものと収納すべき場所。

災害用の自宅の備えには何が必要かチェックして、いざというときに心強い備えを。

撮影・青木和義 イラストレーション・John Danon 文・熊坂麻美

災害が起きたとき、命を守り、必要最低限の生活を続けるには「備え」が欠かせない。用意したいのは、在宅避難用の自宅の備蓄と、別の場所へ避難するための持ち出し袋だ。

「まずは自宅周辺のハザードマップや、自治体の避難所の場所を確認しましょう。都心部は特に、人口に対して避難所が足りていないのが現状です。自宅が安全な場合はストレスの少ない在宅避難がベターなので、自宅の備えを充実させておきましょう。自宅が浸水や倒壊などの恐れがある場合は、避難所へ行く想定で持ち出し袋の備えを重視してください」と鈴木光さん。

自宅の備えと持ち出し袋では、重点的にそろえるものが違うが、どちらの場合も必ず備えるべきなのは、スマートフォンの充電器。

「スマホがあれば、安否確認や情報収集はもちろん、アプリを利用すればライトや緊急時のホイッスル代わりにも。外出時に被災したときのために、ポーチの中にもモバイルバッテリーを入れておきましょう」

何をどれだけ準備するかは以下の記事の目安を参考に。電気やガス、水道などが使えない状況を考えてみると、さらに具体的に必要なものが見えてくるという。

「ないと困るものは人によって違います。ライフラインが止まる、スーパーに物がない、避難所で心細いなどの状況に陥ったとき、何があると安心してやり過ごせるか、想像してみて。それが災害を自分事にすることにつながり、防災意識を高める一歩になると思います」

[自宅の備え]

⚫︎在宅避難時に使うことを想定。

自宅に倒壊や火災、浸水の危険がない場合、ライフラインが止まっていても在宅避難を。買い物には行けない想定で備蓄をしておく。

⚫︎備蓄品は最低3日分、できれば1週間分用意。

大きな災害時はライフラインが復旧するまで最低でも3~4日程度はかかるとされ、できれば1週間分の備蓄を準備できるとベスト。

⚫︎トイレの備えは特に万全に。

断水や排水管の破損でトイレは使えなくなる。特にマンションでは上層階で流した汚物が下層階で逆流しやすい。災害用トイレは必須。

⚫︎ソーラーバッテリーがあると心強い。

照明やスマホ、扇風機などを稼働できるポータブル電源。太陽光で蓄電しながら使えるソーラーパネル付きがおすすめ。

[持ち出し袋]

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⚫︎避難所で使うことを想定。

自宅にとどまることにリスクがある場合は避難所へ。自宅の備えとは別に、平時から避難先で当面必要な生活用品を用意しておく。

⚫︎トイレ以外の備えを2~3日分準備。

トイレは避難所のものを使う前提で、それ以外の自分に必要なものを用意する。荷物が重くならないように、3日分をリュックに。

⚫︎携帯用の充電器とウエストポーチを。

災害時の〝命綱〟ともいえるスマートフォンの充電器、そして貴重品を肌身離さず持ち歩くためのウエストポーチがあるとよい。

⚫︎使い慣れているもの、愛着のあるものを用意。

非常時に少しでも安心して過ごせるように、リュックや着替え、日用品は、なるべく使い慣れているものや愛着のあるものを選ぼう。

【自宅の備え】

まずは最低限の備えを。

備えの充実度が在宅避難時の健康を左右する。

「どんな家でもまず準備したいのは、水、食料、トイレ、そして電源の4つ」。

最低3日分、できれば1週間分準備したい。

「とはいえ、非常食を大量にそろえておくのは大変ですし、いつの間にか賞味期限が切れていた、なんてことも。生鮮食品も含めて食材や水を普段から少し多めに買って、使った分を補充しながら備蓄するローリングストック法を取り入れて、必要量を確保するのがおすすめです。また、せっかく水と食料があっても、トイレの備えが不充分だと排泄を抑えるために満足に飲食できなくなるので、水を使わない非常用トイレの準備はマスト。平時に使い方を試しておくと、いざというときに慌てず対応できます」

[水]多めに用意して脱水症状を防ぐ。

プロが解説、災害用の自宅の備えに必要なものと収納すべき場所。

用意する水の目安はひとり1日3L。
「飲用や料理以外にも、濡れタオルで体を拭いたり口をゆすいだり、使い道は広いのでできれば家族の人数×1週間分の備蓄がおすすめ。スポーツドリンクやお茶などを飲用にカウントしても。脱水を招きやすいコーヒーは控えめに」

[食料]冷蔵庫の食料+常温の保存食を。

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「災害時に停電したらまず冷蔵庫の食料から食べていきましょう。缶詰やレトルト、乾麺などはそのあとに食べればよいので、3日分を目安に。カセットコンロも必ず準備を。ボンベは夏は6本、冬は9本でだいたい1週間分。湯せん調理できる耐熱袋も活用を」

[電源]停電時に必要な電気を考えて準備。

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停電用に、乾電池やソーラー式ライトの備えは欠かせない。ポータブル電源は容量が大きくなるほど高価で重量も増すため、用途を考えて選ぶとよい。おもにスマホの充電用なら200Wh、小型のキッチン家電や生活家電を稼働させるなら500Wh以上が目安。

[トイレ]凝固剤と代用品も多めに準備して。

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災害時は、便器にゴミ袋をかぶせ、その上に黒いゴミ袋を重ねて凝固剤を入れて用を足し、黒いゴミ袋を縛って防臭袋に入れる方法が基本。
「凝固剤はペットシートやおむつ、新聞紙で代用もできます。ひとり1日5~6回は用を足すと考えて1週間分準備しましょう」

【自宅の備え】

自宅の各エリアに 備えておくべきもの。

備蓄品や防災グッズを1カ所に収納すると、その場所に立ち入りできなくなったら取り出せなくなってしまう。自宅のエリアごとに分散させて備えておこう。災害用トイレなど使う場所が決まっているものは、その近くにも収納するのが基本だが、水や食料はデッドスペースも利用して備えるとよい。

「LEDライトや懐中電灯は各部屋に用意するのが理想です。重要なものほど、取り出しやすく、扉が絶対にふさがれない場所に収納してください。また、災害が起きてパニックになると、しまった場所がわからなくなることも多い。どこに何があるか、家族でしっかり共有しておくことも大切です」

プロが解説、災害用の自宅の備えに必要なものと収納すべき場所。

[車]車中での災害に備えるほか、備蓄庫としても。

車中で被災する可能性のある人は、スマホの充電器や簡易トイレ、防寒具など防災グッズ一式をそろえる。温度や湿度に左右されにくい備蓄品を車に置いてもOK。ただし、立体駐車場は停電時は使えないことも考慮を。

[トイレ]排泄関連のものは特に多めに準備を。

災害用のトイレ、トイレットペーパー、生理用品などを置く。洗面所などのトイレに近い場所にも保管しておくとなおよい。「特に災害用トイレは押し入れなどにしまい込まず、わかりやすい場所に収納してください」

[玄関]出入り口をふさがないよう備えるアイテムを厳選。

「外に避難するときのために、底の厚い履き慣れた靴を出せるようにしておくこと。LEDライトや懐中電灯、持ち出し袋も玄関の近くに準備しておきましょう。ただ、備蓄品をあれこれ置いて出入り口をふさがないよう注意して」

[収納]軍手や乾電池などこまごましたグッズを収納。

玄関そばに収納スペースがあれば、割れ物を処理するほうきとちりとり、軍手、乾電池などのこまごました防災グッズを箱にまとめておくとよい。「私は水の保管場所にもしています。ミニ台車にのせておくと移動させやすく便利」

[台所]ローリングストックして食まわりを準備。

ふだん使う食材や調理器具と一緒にカセットコンロや常備食、水も台所周辺にそろえておく。「冷蔵庫の食材も大事な備蓄品になります。詰め込みすぎはよくないですが、調理不要な食品を常に冷蔵庫に入れておくといいですよ」

[寝室]夜中の停電でも慌てず過ごせるように。

就寝中に停電が起きたときのために、LEDライトやメガネなどをベッドのそばに置いておく。「人感センサーで点灯する充電式ライトも便利です。また、割れ物などでけがをしないよう厚底のスリッパも準備しておきましょう」

  • 鈴木 光

    鈴木 光 さん (すずき・ひかり)

    一般社団法人減災ラボ代表理事

    減災ファシリテーター、工学博士。全国の自治体や学校で防災関連の講座や訓練企画を実施。地域の災害リスクを学べる「my減災マップ(R)」も考案。

『クロワッサン』1124号より

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