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『生きのびるための事務』著者、坂口恭平さんインタビュー。「事務は僕にとって、冒険をするためのもの」

撮影・天日恵美子

「事務は僕にとって、冒険をするためのもの」

坂口恭平(さかぐち・きょうへい)さん●1978年、熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年に路上生活者の家の写真集『0円ハウス』(リトルモア)刊行。著作多数、画集、音楽CDも発表。2012年から無償のサービス「いのっちの電話」活動中。TEL.090・8106・4666
坂口恭平(さかぐち・きょうへい)さん●1978年、熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年に路上生活者の家の写真集『0円ハウス』(リトルモア)刊行。著作多数、画集、音楽CDも発表。2012年から無償のサービス「いのっちの電話」活動中。TEL.090・8106・4666

作家、画家、音楽家、建築家として盛んに活動する坂口恭平さん。生き悩む人の電話に24時間対応する“いのっちの電話”でも知られる。「9歳から86歳まで1日100人を超えた日もあります」

このたびの新刊は夢を現実にするための指南書。『POPEYE』のWeb連載、しかもコミックとあって未来ある若者向きの本かと思いきや、いやどうして大人にも十二分に有用な、この先10年後に理想の人生を叶えるためのロードマップだ。今50歳でも60歳でも、多くの場合10年後はやってくる。そして大人世代こそ、その時間があれば多くのことは可能だが、逆に何もしなければあっという間に過ぎてしまうものだと知っている。いま自分の手に残っているものが何かを見つめ直す世代なのだ。そうでしょう?

本作では、大学卒業は決まったけど就活もせず、実家からの仕送りも止まりそうな22歳の坂口青年が、部屋に突然現れたイマジナリーフレンド、ジムに導かれ、望む人生を送るためのノウハウを学ぶ。’80年代を生きた世代にはレイモンド・マンゴーの『就職しないで生きるには』の気配を感じて懐かしいが、

「あの本にあったのは時代の気分で、具体的な方法はなかったですよね。僕の本には、実際に実現できるやり方が書いてある」

書名の“事務”とは給与計算や保険の点数を数える類ではなく、〈抽象的なイメージを数字や文字に置き換えて、《具体的な値や計画》に見える形にする技術〉。

ジムは10年後の成功した自分の理想的なタイムスケジュールをノートに書き出すことを勧め、現実の自分がそれをトレースする方法を伝授する。目標とする収入額を立て、それを得るためのシンプルで現実的な戦略も。

「事務とは広大なフィールドに線を引くこと。事務をお金の話と同様にみんな嫌なものだと思っている。『今日は時間があるから事務でもやるか』みたいな。僕にとっては冒険をしたいとき、ワクワクしたいときまずやることです」

ソクラテスと出会って教えてくれたこと。

ジムはこうも言う。

〈生きてる間にすることって、自分が何が好きなのかを探して、見つかったら、死ぬまでそれをやり続けることです。〉

仕事や家庭に追われて生きてきた大人が、自分が好きなものを思い出せないときはどうしたら?

「子どものとき、最初になりたかったものがあるでしょう? この本を読んでも思い出せなかったら僕に電話してください」と坂口さん。

「ソクラテスにね、言われたんです」。フランスの哲学者、ミシェル・フーコーがソクラテスを再評価した著作から受けた啓示だと言う。

「自分自身をまず救いなさい。次は公衆の面前に出て、自分が救われた経緯を全て話してあげなさい。自らに心配りする方法を教えてあげなさい、って。この言葉はまさしく僕のしていることのテキストブックだと思っています」

絵は道草晴子さん。「いのっちの電話」に電話をかけてきたことが今回の縁に。 マガジンハウス 1,760円
絵は道草晴子さん。「いのっちの電話」に電話をかけてきたことが今回の縁に。 マガジンハウス 1,760円

『クロワッサン』1122号より

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