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専門医に聞く、夏の快眠と注意すべき不眠の症状。

睡眠不足になりやすい夏は、体調も崩しがちに。快眠のヒントと受診が必要な症状まで、睡眠に特化したクリニックの医師、渋井佳代さんに聞いた。

撮影・小川朋央 イラストレーション・佐々木一澄 文・長谷川未緒

夏の睡眠、どうすればもっと眠れるの?

専門医に聞く、夏の快眠と注意すべき不眠の症状。

「私たちの体は、暗くなる、疲れる、体温が下がるなどすると、眠くなるようにできています。夏は日照時間が長く、暑さで運動不足になりがち。外気温が高いため体温が下がりにくく、寝不足になりやすいのです」
と語るのは、睡眠に特化したクリニックの医師、渋井佳代さんだ。加えて更年期ともなれば、自律神経が乱れているため、なおさら睡眠に悪影響が出てしまう。

「睡眠時間の理想は7時間、60歳以降は6時間といわれますが、それより短くても昼間やりたいことがほどほどにできていれば合格としていいでしょう。一方、休日に平日よりも2時間以上長く昼寝をしてしまうという場合は、睡眠不足が疑われるので工夫が必要です」

夏の睡眠対策として、エアコンはつけっぱなしがいい。タイマーをつけても近年の猛暑では、切れると目が覚めてしまう。

部屋の間取りにもよるが、25〜28度の高めに設定し、直接風が当たらないように。家に熱がこもっている場合は、隣の部屋や押し入れなども開けよう。

頭ばかり疲れて体が疲れていないと眠れないので、運動も必要だ。涼しい時間に散歩をする、エスカレーターを使わずに階段を使うなど、わざわざジムに行かなくてもいいので、できるだけ運動量を増やそう。1日7000歩程度を目安にするといい。

「睡眠は心身のメンテナンスに必要不可欠ですが、女性は家族のために遅寝、早起きになりがちです。快眠に導くヒントをいくつか紹介しますので、ぜひ試してみてください」

その不眠、要注意。こんな症状に気をつけて!

いくら環境を改善しても眠りが深くならないことも。以下の場合は病院へ。

「夕方から夜にかけ、足がむずむずしたりほてるのは、足むずむず症候群です。中高年の女性によく見られ、夏に悪化することが多い症状。原因ははっきりしないものもありますが、鉄分不足、脊髄疾患、透析中などが一因といわれています。足だからと整形外科を受診する人がいますが、睡眠クリニックへご相談を。投薬による治療が可能です」

また、睡眠中に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群も要注意。肥満型の男性に多いと思いがちだが、呼吸を安定させる女性ホルモンが減る更年期以降は女性も増加傾向になるという。

「横向きに寝る、マウスピースを装着する、呼吸器を使うなど、程度に合わせて治療します。年齢を重ねると夜中にトイレに起きることも増えてきますが、ベッドに戻ってもう一度寝られれば問題ありません」

ほかにも寝つきの悪さ、中途覚醒、いびき、動悸、頻尿、食いしばりなど、睡眠中の気になる症状は、一度専門医の受診を検討するといいだろう。

真っ暗より、光が入るほうが目覚めはスムーズ。

専門医に聞く、夏の快眠と注意すべき不眠の症状。

夜間、街灯の光などを遮ってくれる遮光カーテンは寝室によく使われるが、閉め切って寝ている人は、少し開けて寝たほうがすっきり目覚められる。

「朝日が昇るに従って明るくなる部屋のほうが自然に起きられますし、起床時の眠気や疲労感が軽減されます。夏は日の出が早いので、足元だけ少し開けるなどいろいろ試してみてください。そして睡眠ホルモンのメラトニンの原料となるセロトニンは、太陽光を浴びることでも分泌されますから、起きたらカーテンをしっかり開けましょう」

また、朝が来たというサインを体に送るためにも、朝食は抜かずに食べることが大切だという。

「メラトニンを作るためにはバナナ、牛乳、大豆、卵、魚などに多く含まれる、アミノ酸のトリプトファンが必要。日光に当たることにより吸収されたトリプトファンがセロトニンとなり、そのセロトニンが夜の適切なメラトニンの生成につながっていきます」

幸せを見つける練習をしてリフレッシュして目覚めよう。

ベッドに入ったら今日の嫌だったことや明日の心配が浮かんできて、眠れなくなった経験は誰しもあるはず。

「考えないようにしましょうと言っても考えてしまうものですから、書き出すことをおすすめします。書いたら読み返したりせず、葉っぱに乗せてさっと水に流すイメージで捨てましょう。そして今日プラスだったことを思い浮かべてください。たまにひとつもありませんという方がいますが、誰もほめてくれないのなら、自分で自分をほめてあげましょう。食事を作ってえらかった、事故に遭わないでよかったなど、3つ〜5つくらいは出てくるはず。なかなか見つからない人は見つける練習を」

ほっとすることや感謝できることを思い浮かべると幸せな気持ちになり、自分を寝かしつけることができる。また、朝の目覚めに対して高い理想を抱かないことも大切だそう。ドラマのように起きた瞬間から元気いっぱいというのは幻想ですよ、と渋井さん。

「朝日を浴びて水を飲み、朝食を食べ、予定があるからと出かける準備をするうちに、段々と目覚めるものなのです」

  • 渋井佳代

    渋井佳代 さん (しぶい・かよ)

    スリープクリニック銀座 院長

    睡眠障害、不眠、過眠、無呼吸症候群など睡眠にまつわる治療を行う。睡眠を可視化しデータ分析、患者の心に寄り添ったサポートが評判。

『クロワッサン』1118号より

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