『「烈女」の一生』著者、はらだ有彩さんインタビュー。「女性たちの感情の痕跡を追いかけたい!」
撮影・石渡 朋 文・鳥澤 光
「女性たちの感情の痕跡を追いかけたい!」
「節義を貫き通す女性」を意味する「烈女」を掲げ、『本の窓』での連載中から話題を集めた評伝的エッセイが一冊にまとめられた。
「烈士と烈女、豪傑と女傑、作家と女流作家など、女の場合が特殊であるかのように表現する言葉」をあえて選んだはらだ有彩さん。
「そんなふうに呼ばれた女性たちの人生を追い、彼女たちが何をどう考え、何が嫌で何が幸せだったかを知りたかった。共感を超えて、その感情まで追体験するような気持ちで書き続けたエッセイです」
ムーミンを生んだ画家で作家のトーベ・ヤンソン、下着デザイナーの鴨居羊子、純印度式カリーやカリーパンで知られる〈中村屋〉を起こした相馬黒光(そうまこっこう)にはじまり、舞踏家、俳優、政治家、学者、かつての皇太子妃に盗賊に陸上競技選手まで。肩書きも生きた時代も地域もさまざまな20人。
「登場するのは第一波から第二波フェミニズムの時代に生きた女性たち。『烈女』と称されるような人でも、その人生を丹念に追っていくと、現代を生きている私たちと変わらない願いや葛藤を抱えているようで身近に感じるんです」
19世紀末から20世紀初頭、そして20世紀終盤までを生きた女性たちの一生。そこに自分事のようにして向き合う秘訣は、女性たちの感情を注視することだった。
「彼女たちが書き残した手紙や日記、受けたインタビューなど、本人の感情について言及していると思われる資料や、クリエイティビティの発露となった作品を主軸に据えました。日記や自伝って本人が隠したいことが隠されていたり、時間が飛んでいたりもするもの。むしろそこを前向きに捉えて、客観的で本当らしく受け止められがちな史実と異なる部分まで含めて、彼女たちがどうしたかったのかという思いを重視したかったんです」
歴史的な出来事よりも抵抗と逸脱に目を向ける。
「よい行いをしたということをベースにしない。私が言いたいことを言っていそうな人を集めない。この2点は最初から決めていました。書きたかったのは偉人伝ではなくて、歴史の中で女がどう扱われていたかの痕跡を辿るもの。
人の人生って、歴史において取り扱われる手付きや置かれている状況に必然的に結びついているものですが、だからといって人は環境に負け続けているわけではないはずです。それおかしいやろ!と彼女たちが抵抗して、時代から逸脱しようとした瞬間を決して見逃すまいという気持ちでした」
歴史に刻まれた出来事ばかりでなく、数十年の人生をその終わりまで描くことにもこだわった。
「評伝を読むこちら側は、誰かの人生の一端に触れた後に離れていくことができますよね。でも、他人がハイライトだと捉える出来事の前後も本人は生きていたし、生きていくという選択肢しかない。だから、そのつらさや理不尽さからも目をそらさないことが重要でした。20人の他人事と思えない人生、一緒にお付き合いください!」
『クロワッサン』1119号より
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