くらし

井澤由美子さんが語る、料理を楽しくする“塩遊び”。

塩の効果を知って適切に使うことで、料理がますますおいしくなる!
「なにはなくとも塩が大切」と語る料理家の井澤由美子さんにその極意を聞きました。
  • 撮影・三東サイ 文・長谷川未緒

「塩は私たちの体に必須のシンプルな調味料です」

「塩はすべての基本、究極です。塩がなければ生命維持はできないし、味噌やしょうゆなどの調味料も作れません」と語るのは、「塩遊び」と「発酵食作り」がライフワーク、薬膳にも造詣が深い料理家の井澤由美子さん。

ブームになったレモン塩をはじめ、梅干しや漬物などの塩蔵ものや、塩とシンプルな調味料で生み出す旬の味覚も、井澤さんにとっては塩遊びだ。20年ほどかけて国内外から集めた塩は700種類以上。数年前から人に譲るなどして絞り、大きく3種類の塩を使い分けている。

「塩を選ぶ際は、まずはマグネシウムの含有量と結晶の大きさを目安に。マグネシウムが多いと、比較的塩らしい苦味を感じます。結晶の細かさや塩分量によって塩味は変わり、粒が大きければ舌に当たる表面積が少ないのでマイルドに感じることも」

マグネシウムは食材を硬くする作用があるため、柔らかく仕上げたい時は含有量が少ないものを使い、魚に塩を振る際は結晶が小さいものに。またサラダなら食感が味わえる結晶の大きいもの、下ごしらえの塩とは違う塩を仕上げに使い味に奥深さをプラスすることも。

「手塩にかけるとか、塩梅という言葉があるように、細やかに塩加減を調整することで、料理の味が決まります。ご自分がおいしいと感じるベストパートナー塩を見つけて、塩遊びを楽しんでくださいね」

大きく分けて、3種類。井澤さんのおすすめ塩はこれ。

粗塩

粟國(あぐに)の塩

粒の大きさ 普通、粗い
塩味
   しっかり
苦味    
しっかり

沖縄県粟国島周辺の海水を天日で水分を飛ばして塩分濃度を高め、釜炊きで煮詰めて自然乾燥。マグネシウムの含有量がほかの塩より多い。どっしりとした味わいで、キリッと塩を効かせたい時に。

パウダー塩

天日海塩

粒の大きさ パウダー状、極小
塩味
   丸い
苦味    
弱い

オーストラリアのきれいな海岸で天日と風で2年間かけて自然乾燥させ、沖縄で不純物を取り除き粉砕。非加熱。柔らかな塩味に仕上げたい時に。細かな粒子なので、均一に振り塩したい時にもいい。

結晶塩

マルドンシーソルト

粒の大きさ 結晶状
塩味
   ほどよい
苦味    
ほどよい

釜炒きで煮詰め、濃縮させて乾燥。ピラミッド形の結晶で、粒が大きくシャリシャリしているので、食感のコントラストをつけたい時に。サラダやステーキ、チョコレートやデザートなどの仕上げにも。

塩の効果で、味が変わる!塩ってこんなことができるスゴい調味料。

※( )内は、井澤さんが使った塩の種類。

塩蔵、保存。(粗塩)

肉や魚に塩を直接まぶしたり、食塩水に漬けたりすることで、食材から水分を抜いて臭みを取り、雑菌の繁殖を抑えて長持ちさせることができる。熟成を進め、塩味をつけることで風味が増すといった効果もある。

甘みを引き立てる。(結晶塩)

スイカや、おしるこなどにほんの少し塩を加えることで、甘さが引き立ち、よりおいしく感じる。これは塩の対比効果で、甘みと塩味の2種の味があるとき、片方の味が強くなると、もう片方の味も強まるためだ。

酸化防止。(粗塩)

りんごやバナナ、蓮根やごぼうなどの切り口が変色するのは、食材に含まれるポリフェノールが酸化するから。塩水に漬けると塩のナトリウムイオンが切り口に膜を作り、ポリフェノールの酸化を抑制、変色を防いでくれる。

水分排出。(粗塩)

青菜に塩というが、野菜に塩を振ると水分が抜けてしおれたようになるのは、浸透圧によるもの。かさが減って量を食べられ、調味料の味もしみやすくなる。塩揉みする際の塩の量は、野菜の重さの1〜2%が目安。

\塩で味の道をつけた野菜を、レモンと油でまとめて。/

にんじんとりんごのラペ

にんじん1本はピーラーでスライスし、塩小さじ⅓を馴染ませ、水分を出して水気を絞る。りんご個もピーラーでスライスし、薄めの塩水(水1カップに塩2〜3つまみ)に3分漬けて変色を防ぎ、水気を絞る。器に盛り、好みの量のレモン果汁とオイルをかける。

井澤由美子

井澤由美子 さん (いざわ・ゆみこ)

料理家、養生デザイナー

国際中医師、調理師、東京食薬Labo主宰。旬の食材の味と効能を生かした料理に定評がある。『まいにち食薬養生帖』など著書多数。

『クロワッサン』1102号より

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