くらし

5つのステップで実現、散らからない家の仕組み作り。

欲しいのは適正なものの量と場所が常に確保された住まい。
住む人全員が参加し、散らからない仕組みの土台を作るには。
  • イラストレーション・山口正児 文・板倉みきこ

自分と家族がずっと快適。散らからない家の仕組み作り。

「日本は今、世界で最も片づけと整理収納の難易度が高い国になっています」と、日本ライフオーガナイザー協会代表理事の高原真由美さん。

曰く、居住面積が小さく収容スペースが限られている。さらに安価で高品質な商品が大量にあって買い物の利便性も高く、ものが増えやすい状況にもある。またSNSの普及で理想の部屋を見過ぎてしまい、自宅をそうできない自分に罪悪感を感じるなど、心への負担も大きい。

「これまで、片づけには思考と空間の整理が大切だと考えてきましたが、情報とものが氾濫している今では、〝もの〟と〝空間〟だけにフォーカスしてもうまくいきません。もう一つの鍵が〝人〟。そこに暮らす人の行動や習慣にもフォーカスすれば、片づけの難易度が下がることを実感しています」

家を片づけたいと思ったときは、まず〝人〟に向き合い、家の中のものの所有傾向を知ることだ。

「片づけに仕組み作りは必須。〝もの〟の傾向がわかってくると〝人〟が散らかしにくい〝空間〟の仕組みに近付きます。一緒に住む家族にも考えてもらうと効果的ですが、まずは自分から」

高原さんが提案する分類は下記。どれが多いと良くないということではなく、傾向を知るだけで片づけの仕組みの方向性が見えてくる。次に重要になるのが家族や同居人の巻き込み方。

「自分一人が頑張っても片づきません。誰がやっても同じ結果を生む仕組みを作るため、5つのステップを考案したので、ぜひ実践してみてください」

【 家の中にあるものの所有傾向、所有基準を明確にする。 】

1.生活必需品
トイレットペーパーや食料品、衣類、寝具、衛生用品など、生活の維持に欠かせないもの。

2.より便利に暮らすためのもの
必須な調理道具から、あると助かる家電など、利便性の高低はあるが概ね使っているもの。

3.ないと心が落ち着かないもの
他者にとっての価値は関係なく、自分のQOL(生活の質)の維持には欠かせないもの。

4.あると気持ちがあがるもの
ジュエリーや推しグッズなど、持っていると自分の機嫌や充実度があがるもの。

5.社会性として持っているもの
冠婚葬祭に関わるものや人間関係を円滑に行うために必要なもの。頂きものなども。

6.そのどれでもないもの
所有の基準が曖昧。何も意識せず、なんとなく買ったものや意味なく持ち続けているもの。

STEP1. 家の中にあるものを分類してみる。

最初に取り掛かりたいのは、自分一人でものの所有傾向をチェックできる場所。家族のものや共有物には関わらない、書棚や趣味のコーナーや、自分だけの衣類クローゼット、チェストなどを確認しよう。その際、片づけが苦手な人ほど、小さなスペースから始めてほしい。

「中にあるものが、上のものの分類のどれにあたり、どのジャンルが多いかを確認してください。時間と心や体力に余裕があれば、中のものをいったん取り出して分類してみるといいですが、余裕がなければ「この場所にはこういうジャンルのものが多いな」ということを把握するだけでも充分です」。この段階では、ものの収納方法を変更する必要はなく、所有傾向を知るだけでOK。

「ものと向き合う第一歩。これはなくてもいいかも、と思うものがあったり、同じものがこんなに数多くあったのか、といった気づきがあり、次回買い物するときに検討する習慣が生まれるようにもなります」

STEP2. リビングの平面をいったん片づける。

リビング&ダイニングは、多くの家庭で家族が一番長く時間を過ごす場所。しかし、くつろいだり、テレビを見たり、勉強したりと、多目的に使うスペースでもあるので、各人の使うものや使い方で散らかりやすい。

「長く過ごす所が散らかっていると、誰でもストレスを感じるものです。また、自分ばかり頑張っても片づかないので、家族全員に関わってもらえるように、片づけの仕組みの見直しが最も必要になる場所です」

まずは家族の手伝いを頼まず、自分一人で片づけて。

「床面、テーブルやソファの上、チェストの天板などにものが置かれていると散らかっていると感じるので、水平で見て、面となっている所のものをなくすのが基本。明らかに不要なゴミなどは処分しますが、このときものを減らす必要はありません。子どものものは子どもの部屋へ、といった具合に移動させるだけ。とにかく、自分の理想のスッキリした空間をいったん作ってみてください」

STEP3. 家族にその状態を見せコンセンサスを取る。

とりあえずものを片づけて自分の理想のリビングができたら、ここで初めて家族に参加してもらう。

「リビングを見せ、みんなに『これが私にとって理想の部屋。たとえ散らかしても、この状態に常にリセットしたい』ということを伝えます。これまで『片づけて!』とお願いしたり注意してもままならなかったのは、ゴールの形が漠然としていて家族全員が共有していなかったからです。コンセンサスを取って、みんなの思考を整理すれば、それぞれの具体的な行動を引き出せます」

このとき、「誰それのものがいつも散らかっているから悪い!」など責めたり怒ったりしないこと。

「批判されたら誰だって嫌なものだし、このプロジェクトに参加してもらえなくなります。お互い機嫌が良く、冷静に話せるタイミングを選び、『全員が片づけやすい仕組みを作りたい。出来ないことは仕方ないが、どうしたら片づけられるかを考えたい』のだと伝えましょう」

STEP4. 家族の動線と散らかる理由を観察する。

数日、数週間経つうちにきれいだったリビングが散らかっていくのは想定内。ここでイライラして、散らかったものをすぐ片づけてしまうのは早計な判断だ。

「この先も自分だけが率先してやっていくつもりならそれでいいのですが、使ったものを各自で元に戻すことをルール化した散らかりにくい部屋を目指すなら、グッと我慢。散らかるものは何なのか、それはなぜ散らかるのか、家族の行動に着目してみましょう。誰がどこで何をしているのか、何故そこでそう使うのか、どうして置きっぱなしになるのかをじっくりチェックしましょう」

家族それぞれに行動パターンがあり、自分が作った決まりごとが絶対の正解ではなかったと気づくことも多い。

「片づかないのは、各人の動線に合ったところに収納場所がないから、とか、出したものがしまいにくい収納方法になっているからとか、家族の散らかし方を観察してみると、改善ポイントが見えてきます」

STEP5. 今、最適なものの収め方を考える。

●収納、保管、保存で分ける。

使用頻度で置く場所や置き方も変わるので、ものを収める前に、収納、保管、保存の3つのジャンルに分類する。

「使用頻度の高いものは使いやすい場所に配置すること。これが〝収納〞。季節ものなど、滅多に使わないものは、使い勝手が悪くても構わないので〝保管〞に適した場所に置きます。さらに使わないけれど所持しておきたいものは、出し入れしない納戸の奥や倉庫などで〝保存〞です」

一番工夫すべきは、特徴に合わせた収納場所。共有物は家族で片づけが一番苦手な人に合わせる。見やすくて取り出しやすく、しまいやすい収め方を見つけたい。

●使い方に合わせて場所を柔軟に。

収納場所を作ったのに、使ったものを元の場所に戻さない家族にイラッ。ただマイルールを押し付けていると、結局自分が片づけ役に徹することになる。

「ものの定位置は、使う人に合わせないとうまくいきません。例えばリビングでメイクする娘のために、メイクボックスを置く。ソファで読書やゲームをする夫に、専用の収納ケースをソファ脇に置くなど、まずは使う場所の近くに収納場所を設けるのが手っ取り早いです。面倒臭いと戻さないので、出し入れしやすい収納用品かどうかも大事です」。

初めからベストを目指さず、ベターを重ねよう。

●空いている場所にも住所を。

片づけの仕組み作りには、ものの定位置=住所を作ることが鉄則。ただ、常に状況に応じて再考も必要だ。

「家族から『あれどこ?』と聞かれる頻度が高いものは、置き場所や置き方を変えてみる必要があるでしょう」

また、棚やボックスの上に隙間があると無意識にものを置いてしまい、結果その空間が雑然とする。

「収納の余白は散らからない仕組み作りが必須。空いた場所には即〝住所〞を。例えば空のボックスを置く、空の引き出しを作る。そこは新しいものが入ってきたとき、定位置が決まるまで置く場所、などとしておきましょう」

高原真由美

高原真由美 さん (たかはら・まゆみ)

日本ライフオーガナイザー協会代表理事

人、物、空間の関係性に着目し、思考の整理から始めるコンサルティング型の片づけ収納支援のプロを育成する。

『クロワッサン』1103号より

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