牧野富太郎博士の功績を伝える広大な植物園へ。高知・花と草木をめぐる旅。
一度は訪れてみたい憧れの植物園を、フラワースタイリストの平井かずみさんと訪れました。
撮影・徳永 彩(KiKi inc.) 文・黒澤 彩
高知県立牧野植物園
季節ごとに訪れたくなる、全国でも指折りの広大な植物園。
「花と草木をめぐる旅なら、ぜひ高知に行きましょう!」
平井かずみさんのこんなひと言をきっかけに、まず訪れたのは、植物分類学者・牧野富太郎博士の功績を今に伝える「高知県立牧野植物園」。
およそ8ヘクタールもの広さの園地は高知市を見下ろす五台山(ごだいさん)の山頂近くにあり、山の起伏を生かしながら自然と調和するように造園されている。四季折々に、3000種類以上の植物が目を楽しませてくれる。初めて来園した人は想像以上のスケールに驚くはず。
「こんなふうに自然と一体になっている植物園はめずらしいですよね。いつ来ても気持ちのいい場所。それでいて、同じ景色だったことは一度もなく、その時々の季節を感じられます」
見どころがたくさんある園内。 咲いている花以外にも注目を。
到着したら、先へ先へとはやる気持ちを抑えて、まずは正門から本館入り口までのアプローチをじっくり観賞しよう。そこは「土佐の植物生態園」。通路を挟んで両側に、高知県内の異なる標高の植生を再現した、実はこの植物園のハイライトともいえるエリアだ。
「植物園のスタッフの方によると、標高が違うエリアの落ち葉や種子が混ざらないように気をつけたり、枝の切り口が見えないように剪定したりと、管理がとても大変なのだそうです。努力と工夫が詰まっているんですね」
ここで牧野博士が特に愛したというバイカオウレンの花を初めて見ることができて、平井さんも感激ひとしお。
“小さくて愛らしいバイカオウレンに初めて出合えました。”
せっかく高知県立牧野植物園に来たならば、牧野富太郎博士にまつわる展示もぜひ見ておきたい。
「牧野先生は、連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルになっている“時の人”ですよね。どんな人生を歩んだのか知りたくなりました」
展示館の常設展示室では、その生涯を辿りつつ、生前の写真や愛用品(複製)、博士が描いた植物図などを見られる。晩年の自宅の仕事場を再現したコーナーもあり、本当に本人がそこにいるのかとドキッとしてしまうほどの完成度。
何度もここを訪れ、著書を愛読しつつも、牧野博士その人自身については詳しく知らなかったという平井さん。
“牧野富太郎さんの人柄に触れて、親しみを感じました。”
「植物愛の深さやチャーミングな人柄にあらためて魅了されました。絵の才能もすばらしい。植物図は正確な上に美しくて、独学というのが驚きです」
“木々の緑に包まれて深呼吸すると心まで洗われます。”
園内にお遍路道も!? 多くの人に開かれた植物園。
園内のレストランで休憩したあとは、温室や50周年記念庭園のある南園を散策。もとは四国八十八ヵ所霊場のひとつである竹林寺の境内だったエリアで、お遍路道も通っている。
「古い石段を上ってみたら、いい運動になりました(笑)。起伏があるおかげで、同じ庭園でも見る位置によって風景がずいぶん変わりますね」
朝から夕方まで、一日たっぷり滞在しても足りないほど。また来たいと思うのは皆同じで、地元はもちろん遠方からもリピーターが絶えないという。「あっちに桃の花が咲いてますよ」「この木は樹齢が古くてね」などと教えてくれる常連さんの多いこと!
「私も次にいつ来られるか楽しみです。これから木々が芽吹きはじめて、新緑の季節もいいですよね。牧野先生のことも勉強できたし、ますますこの植物園が好きになりました」
\牧野植物園で買ったおみやげ/
●高知県立牧野植物園
高知市五台山4200・6
営業時間:9時~17時(最終入園16時30分)
休園:年末年始ほか
入園料一般730円(高校生以下無料)
TEL.088・882・2601
『クロワッサン』1092号より