「子供の頃に憧れていたのはロックではなく沢田研二や松田聖子」、宮本浩次が歌う歌謡曲の名曲。
撮影・小川朋央 ヘア・茅根裕己(Cirque) 文・柴 那典
歌謡曲の名曲の数々に新たな息吹を吹き込む。
日本を代表するロックバンド、エレファントカシマシのボーカル、そしてソロ活動中の宮本浩次さんがカバー作品『秋の日に』をリリースした。
50代になってからソロ歌手としての活動を始め、2020年に発表したカバーアルバム『ROMANCE』が自身初のチャート1位を獲得し大ヒットを記録。「あなた」や「赤いスイートピー」などをカバーした『ROMANCE』に続き、『秋の日に』でも女性が歌った名曲の数々を力強く伸びやかな歌声で歌い上げている。
昭和を彩った歌謡曲を歌うことは、宮本さんにとって自分自身の原点と向き合う体験になったという。
「私は高度経済成長の時代に生まれて、子どもの頃に憧れていたのはロックではなく、沢田研二さんや松田聖子さんのような歌謡曲のスターだったんです。毎週ラジオにかじりついて『全国歌謡ベストテン』を聴いていた。そういう自分を表現することは、ソロを始める時のもともとの目標としてありました」
男性歌手である宮本さんが女性の歌を歌うことで、曲に新たな表情や深みが生まれているのも魅力だ。
「最初にNHKの番組で『赤いスイートピー』と『喝采』を歌ったら、思いのほか評判がよかったんです。どちらも子どもの頃によく歌っていた曲だし、女性の曲を歌うことは自分にとって自然なことでした。
それに、女性の歌を男性が歌うことで、曲の良さも浮き彫りになるし、また新しい解釈も生まれる。キュートで、健気で、熱い女の人の歌、自分自身も共鳴してしまうような歌が自分に合っていると思いました」
中森明菜さんの「飾りじゃないのよ涙は」と「DESIRE-情熱-」のエネルギッシュなカバーも新作の聴き所の一つ。「歌謡曲をただの懐メロとしては思っていない」と宮本さんも語るように、歌うことで曲を今の時代に蘇らせるような表現になっている。
「中森明菜さんは、まるで哲学のようなディープな女心をドライに歌っている。だからこそ歌姫としてあらゆる世代の女性に愛されているし、尊敬されている。明菜さんの歌は男性が入り込めない。だからリスペクトの思いで歌いました」
念願だったソロ歌手としてのカバーコンサート『ロマンスの夜』も開催し、今年はエレファントカシマシの活動にも力を入れるという。さらに見逃せない年になりそうだ。
「2023年はエレファントカシマシのデビュー35周年なんです。久しぶりに新曲も出しますし、アリーナツアーも決まった。最強の形で盛り上げられるよう全力を注ぎたいですね」
『秋の日に』
●Play List
01. あばよ
02. 飾りじゃないのよ 涙は
03. まちぶせ
04. DESIRE-情熱-
05. 愛の戯れ
06. 恋におちて-Fall in love-
『クロワッサン』1086号より
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