シティポップブームを受けて再評価の気運が高まる、ブレッド&バターの意外な交友関係。【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】
ブレッド&バター「特別な気持ちで」
「湘南サウンド」を代表する兄弟デュオの意外な交友関係。
ここ数年のシティポップブームを受けて再評価の気運が高まっている岩沢幸矢と二弓の兄弟デュオ、ブレッド&バター。今年でデビュー55周年の彼らがベストアルバム『ザ・シングルズ -55th Anniv. All Time Best-』を発表しました。
神奈川県茅ヶ崎市出身のブレッド&バターといえば、加山雄三やサザンオールスターズらと並ぶ「湘南サウンド」の代表格。そのイメージからすると意外に思われるかもしれませんが、彼らのキャリアを語る上で欠かせないのが、ロンドンで録音した1973年のファーストアルバム『IMAGES』から続くスティーヴィー・ワンダーとの親密な交流です。
語り草になっているのは、スティーヴィーの1984年の全米ナンバーワンヒット「心の愛」(原題「I Just Called to Say I Love You」)をめぐる顛末。
この曲はもともと1979年に彼がブレッド&バターに提供した楽曲でしたが、後日スティーヴィーより映画『ウーマン・イン・レッド』の主題歌として使いたいとの申し出があって発売は中止。「特別な気持ちで」とのタイトルですでに完成していた曲は「心の愛」のヒットから4ヶ月後、1984年12月になってようやくリリースが実現しました。
「特別な気持ちで」は作詞を呉田軽穂(松任谷由実の変名)、編曲を細野晴臣が担当。スティールパンの音色が涼しいトロピカルなアレンジは、厳しい残暑を少しやわらげてくれると思います。
『クロワッサン』1125号より