【演目:高砂や】おめでたい婚礼ネタの一席。│ 柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
【演目】高砂や
あらすじ
ご隠居のもとへ大工の八五郎が「相談がある」と訪れる。聞けば町内一のご大家、伊勢屋の若旦那の婚礼の仲人を引き受けたものの、作法をまるで知らないので困っているという。そこでご隠居は「細かいことは介添え役の人に任せて、お祝いの謡曲〝高砂や〞を歌えればいい」と安心させる。謡の素養などまるでない八五郎のために稽古を始めたものの、想像以上の不器用ぶり。謡の声の出し方は、豆腐屋の売り声に近いと助言するが…。
落語家になると、お知り合いなどから「結婚披露宴の司会をお願い」なんてお話をいただくのはよくあることです。中には落語より司会の方が評判も収入も良い…なんて仲間もいるくらい。
余談ながらワタクシ、若手時代に司会ではなく、結婚式場に見学に来るカップルのために「こんなお式はいかがですか?」とプレゼンする〝模擬結婚式〜披露宴〞の新郎役のバイトをしていたことがあります。実生活では式も披露宴もやったことがありませんが、見知らぬ新婦役の女性とは何度も式を挙げています。
現在は格式張らずに、仲人を立てないお式も多いと聞きます。どんな形式にしろ、主役の新郎新婦が未来を誓い、お世話になったかたがたに感謝をする。周囲はその門出を祝う。心のこもった婚礼はいいものですね。この噺を演じていても「今日はいいお式で」という八五郎のセリフを、演者が心から言えるような高座が務められたら、落語日和極まれり、ですね。
『クロワッサン』1084号より
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