フリーランスPR、編集者の森 祐子さんに聞く、「私の好きな東京」。
話題には事欠かないけれど、最先端ばかりが東京じゃない。
その楽しみ方は人の数だけ。
より深く濃く味わうためにこの地に根を張る森 祐子さんに「私の好きな東京」を聞いた。
文・長谷川未緒
東京は雑多な中で、必ずおもしろく暮らしている人がいて、常に新しいことに出合える街。自分の見たいもの、好きな人が、美しく点在しています。
ゴミも多いけれど、尊いものが見えやすい場所。私の人生のテーマでもある「ファンタジーリアル」(寓話的現実)の最たる形が東京のように思います。
雑多であることが東京の魅力だと思うので、これからも新陳代謝が起こり続ける街であってほしい。
ただ、建築や態度の側面でいうと、都市として美しくありたいという意識がもっと高まるといいなあ。闇雲に何もかも残せとはいわないけれど、新しい建築物を造るときには、都市としてのランドスケープへの意思や、そこに集う人々の精神性への導きがあったら、と。
理想をいえば、無責任な大人や無知な若者の爆発の場という側面よりも、配慮や敬意といった大人の感覚のほうが表側に立つ都市であれたらと願います。
【私の好きなTokyo】
●住み手の個性が感じられる場所
「代々木上原や清澄白河のような、住み手の個性が感じられるところを散歩することが好きです。
特に清澄白河は好きな街で、東京都現代美術館があり、いい展示が多いので、毎回行きたいと思うくらい。
自宅近くの目黒区八雲の邸宅沿いもよく散歩しています。住宅の庭や窓からうっすら透ける暮らしの様子などを眺めていると、自然豊かな地域の庭とは全然違い、庭に込められた自然への憧れが表れています。その表れ方に、住む人の個性が感じられます」(森さん)
●個人店主の顔が見える店
「エリアに限らず、個人店主が顔を見せるショップが好きです。雑多な街にキラリと存在する素敵な人たち。サムエルワルツ(神宮前)、SOURCEObjects(ソウスオブジェクツ)(恵比寿)、OCAILLE(オカイユ)(南青山)、アウトバウンド(吉祥寺)、VOICEflower(ボイスフラワー)(表参道)、R(アール)(西麻布)、HADENBOOKS(ヘイデンブックス)(南青山)など……。
どこも滅多に行けないのですが、時折、用事の合間に出かけて世間話をしたり、話せなくても、同じお顔を拝見できることに、安心感を覚えます」
『クロワッサン』1079号より