置いておくほど旨味が増す、目から鱗の魚の冷蔵保存術と活用レシピ。
撮影・三東サイ スタイリング・矢口紀子 文・小澤水奈
「魚を買ってきたら、まず洗って清潔にすることを習慣にしてほしい」とウエカツ水産代表のウエカツこと上田勝彦さん。
ただし、魚が水を吸収しないように、水道の流水で3秒すすぎ、すぐに吸水性の高い布巾などで水気をよく取ること。これをペーパーとラップで包めば2〜3日保存できるが、さらに塩を使うと保存性も旨味も増す。
「魚は体液、つまり水分が多いので、塩で脱水すればくさみも取れ、身が締まって味わいも凝縮する。保存中にはタンパク質が分解されてアミノ酸などの旨味成分が増すからうまくなるよ」。
塩をあてる魚は、基本的に何でもいい。まぐろ、かつお、さば、さわら、鮭、すずき、鯛、ぶりなどの三枚おろしの切り身やサクを使えば手軽。
漬けて日が浅ければ塩気もほどよく身も柔らかめなので、焼いたりゆでたりするだけでも美味。日が経てば色はくすむが、塩気が入って旨味が増し身が締まるため、ツナ缶やベーコンのように炒め物や煮物、汁の味出しとしても使える。
魚の漬け方
手順はシンプル。水気はしっかり取り除こう。刺身用のサクなら、塩締め、しょうゆ漬けした魚の生食もOK。
【しょうゆ漬け】
魚の切り身を流水で3秒洗い、水気をよく取る
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切り分けて、粗塩をまぶし、ゆっくり5数える
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すぐに流水で洗って、水気をよく取る
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しょうゆだれに漬けて、冷蔵
【オイル漬け】
魚の切り身を流水で3秒洗い、水気をよく取る
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粗塩をまぶして、塩が溶けるまでおく
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流水で洗って、水気をよく取る
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加熱したオイルで火を通し、味と香りをつけて冷まし、冷蔵
【塩締め】
魚の切り身を流水で3秒洗い、水気をよく取る
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粗塩をまぶして、塩が溶けるまでおく
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流水で洗って、水気をよく取る
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ペーパータオルに包み、密封して冷蔵
【塩締め】
まぶした粗塩で魚の水分を出した後、洗い流してよく水気を拭き取る、これが塩締め。塩が魚の身に入り始めているので、脱水と熟成が進み、1週間は持つ。まぐろやかつおは、次第に生ハム風にねっとりと身が締まる。「漬かり具合で変わる旨味、塩気、食感のグラデーションを楽しもう」とウエカツさん。
●おすすめの食べ方
角切りをわさびだけで。/豆板醤、ごま油、しょうが、白髪ねぎで。/薄切りをおかずに炊き立てご飯と。/焼いてほぐし、チャーハンに。/薄切りをフライパンでさっと焼く。/カレーに。
まぐろの生ハム風サンドイッチ
(翌日〜1週間後がおすすめ)
魚の塩気に甘みと辛みを添えて。
【作り方】
1.食パンを2枚トーストする。
2.1枚にオレンジマーマレードを塗る。
3.もう1枚に練りからしを混ぜたマスタードを塗り、スライスした玉ねぎ、薄いそぎ切りにしたまぐろを重ね、こしょうをふって、貝割れ菜をのせる。
4.マーマレードを塗ったパンではさむ。
*さばなら、香ばしく焼くとよい。
まぐろのカルパッチョ
(10分後〜翌日がおすすめ)
刺身とはまた違う食感と旨味。
【作り方】
1.新玉ねぎ(または玉ねぎ)と、にんじんなど好みの水気が出にくい野菜を用意。玉ねぎはスライスし、水にさらす。ほかの野菜はせん切りや薄切りにする。
2.まぐろを薄いそぎ切りにし、水気をきった野菜と盛り合わせる。
3.レモン、橙など柑橘の搾り汁、こしょう、オリーブオイルを回しかける。
塩さばの野菜炒め
(1週間以上後がおすすめ)
魚の塩分で味付け不要。
【作り方】
1.塩締めのさば半身分は、腹骨、中骨をすき取り、縦半分に切って、それぞれ4等分にする。
2.フライパンに油をひき、マッチ棒状に切ったにんじん½本分、皮目を下にしたさばを並べ、火をつける。
3.中火にしてチリチリと焼けてきたら、ピーマンの細切り1個分、長ねぎの斜め切り1本分、キャベツのざく切り小¼個分をのせ、ふたをして弱火にする。
4.時々箸で底から返し、魚の塩気で野菜がしんなりするまで蒸し焼きにする。
5.ふたを取って強火にし、へらと箸で混ぜて水分を飛ばし、香ばしく仕上げる。