“もの”を減らすことより笑顔を増やす、「実家の片づけ」実践レポート。
親の“思いを”を大切にした片づけ術をレクチャーしてもらいました。
撮影・滝川一真 文・天田 泉 イラスト・松元まり子
いよいよ片づけスタート。思い出話に花を咲かせつつ、どんどん仕分け。
「本棚にあったほうがいいものと、なくてもいいものをお母さまに選んでいただきますね」と永井さん。一つひとつのものをTさんが判断していきます。
「コーラスの曲はぜんぶ頭に入っているから楽譜はいらないわ」「この年賀状は仲人さんからいただいたの。とても達筆でしょ? こういう字が書けたらいいなと思ってときどき見るんです」……片づけながらものの背景や思い出を語るTさん。親子で昔話に花が咲くひとときも。「懐かしい話が聞けてうれしい」と娘さん。
整理の結果、読まない本や仲人をした人からのお土産の置物、娘たちのものなどは処分することに。当初の1/3くらいの量に減りました。
次は、残すものの置き場所をTさんと相談しながら、使いやすいように決めていきます。すっきりと片づいた本棚は、何がどこにあるのか一目瞭然です。
「実家の片づけは月1回などゆるいペースで進めると無理がありません。最初にかける時間を決めたら、親御さんが疲れないように15〜20分ごとに休憩をとりましょう。終了予定時刻の小一時間前にはしまいはじめるといいですね」
本棚が片づいた数日後、永井さんのもとにTさんから感想が届きました。「ものを取りに行く距離が短くなってラクです」。ほかのものの置き場所も、自ら工夫し始めたと言います。
「以前、寝たきりだった女性の部屋を片づけたら、その方が自力でトイレに行けるようになりました。片づけはその方の行動を広げたり、もっといえば生き方にもいい影響をもたらすのです」。
大切な思い出を 共有するよろこび
旅先で立ち寄ったお店のマッチは、夫婦の思い出。左はTさんが長年続けてきたコーラスの写真。片づけは親の大切なもの知り、思いを共にする機会。
そのときに備えて 「旅立ちセット」をつくれば、安心。
「片づけのときに、親に旅立ちの棺に入れたいものを決めてもらうといいですよ」(永井さん)。Tさんはコーラスの発表会で着たピンクのワンピースと、思い出の合唱曲の楽譜を選んだ。
(片づけたところ)After 置き場所を決めて使い勝手よく、より安全に。
(A)家族の思い出の写真を飾る
(B)好きなものを飾る
(C)ひと目で中身がわかる、浅めのトレイ
(D)書類は立てて取り出しやすく分類
(E)よく使うものは上の段に
(F)あまり使わないものや重いものは下の段に
(G)ガラス戸を外して、ものを取りやすく
(H)本棚1本なくなりました
必要なものだけ残したら、本棚1本が空に。課題だった紙類は、種類ごとに分類してファイル立てに入れて取り出しやすく。手の届きやすい高さの棚には使う頻度の高いものを。体に負担をかけない工夫も。片づくと「写真は季節ごとに変えたい」と新たな意欲が。
使い慣れた箱にラベルを貼ればひとめでわかる。
永井さんのラベルセット。「ものを入れた箱や缶は中身とセットで覚えているので、そのまま使います。ラベルには、親が決めたことばを自分で書いてもらいましょう」(永井さん)
一緒に使うものはグルーピングするとすぐ使える。
宅配便の受け取りなどでよく使う、はんこと朱肉をひとつにまとめてグルーピングすると、便利。ほかにも掃除セット、お茶セットをつくっておくと、出すのも片づけるのもラクになる。
『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)
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