はるな いままでの作品で特に印象深いものを1本挙げるなら何ですか?
中井 1本!? 難しいな〜。演出家の上田久美子先生の作品はどれも好きですが、本公演(※3)なら花組の『金色(こんじき)の砂漠』(’16〜’17年)かな、耽美好きとしては(笑)。
はるな 上田先生は耽美系から月組の『BADDY(バッディ)』(’18年)のような弾けたショーまで幅広いですね! 私は最近『アナスタシア』をよく観てます! 仕事中のBGMとしてかけたり。
中井 あと羽山紀代美(※4)先生振り付けの名場面を集めたリサイタル『ゴールデン・ステップス』。こちらです!(サッ)
はるな さすが、DVD持参!
中井 燕尾(※5)満載! 私はショーの終盤、燕尾を着た男役の群舞からフィナーレにゆく流れが好きなので。燕尾の場面といえば大階段(おおかいだん)(※6)から降りてきたとき、トップスターが「……フッ!」って声を上げると一斉に拍手が巻き起こるのすごいですよね。宝塚ならでは。
はるな あの一声は熟練の技!
中井 拝みたくなっちゃう。「『フッ!』いただきましたっ!」って。それがトップスターの退団公演だと組子(くみこ)(※7)との絆が表れる演出も盛り込まれていて、そこに勝手に思いをのせて泣く!! スターさん自身も最後の最後まで芸を高めて卒業していく姿が尊いですよね。
※3(本公演)
5組が交代で行う約1カ月間の定期公演。原則宝塚大劇場→東京宝塚劇場の順番で公演されるため、熱心なファンはご贔屓をいち早く観るため関東在住でもまずは大劇場まで足を運ぶ。
※4(羽山紀代美)
元生徒であり現在は振付家。1975年振付家デビューし、特にショー終盤の燕尾服を着た男役による群舞に定評がある。構築的なフォーメーションと端正な振り付けは宝塚の様式美の極み。
※5(燕尾)
燕尾服の略。黒燕尾、白燕尾、色や装飾を施した「変わり燕尾」などパターンは無限。なかでも黒燕尾は男役の正装といわれ、年月を経て磨かれる着こなしにその人柄と美学が投影される。
※6(大階段)
高さ4m超の階段型装置。トップコンビのダンスや燕尾服での群舞、フィナーレなど宝塚の重要シーンには欠かせない存在。段の幅は23cmと狭いが、足元を見ずに降りるのが鉄則。
※7(組子)
花月雪星宙、各組を構成するメンバーのこと。トップスターも組子の一人である。ちなみに組子のまとめ役として各組に組長と副組長が存在し、組長には通常最上級生が任命される。