くらし

小さな不規則が大きな不調の原因に。まずは「体内時計」を整えよう。

誰もが聞いたことのある「体内時計」。が、その働きは? 多少崩れたってすぐ直るんでしょ? いえいえ、そんなに甘い話ではないのです。
  • 撮影・小林キユウ スタイリング・高島聖子 文・小沢緑子

長引くコロナ禍の影響で生活リズムが崩れ、体内時計が乱れて「疲れがなかなかとれない」 「寝付けない」などといった不調に悩まされるケースが増えている、と睡眠コンサルタントの友野なおさん。

「思うように外出できない不便さや働き方の変化へのとまどいのほかにも、親しい人に会えないストレス、先の見えない不安なども背景にあると思います。放っておいても不調は改善しないのでケアが必要です」

まずは下記の10のチェック項目で点検。結果を踏まえつつ、次ページから紹介する、体内時計を整えるための6対策を生活に取り入れていこう。

\あなたの「体内時計」を点検する/ 10のチェック項目。

□ 毎朝、同じ時刻に起床する。
□ 朝の身支度は、カーテンを開けた明るい環境で行っている。
□ 1日3食、だいたい決まった時間に摂っている。
□ 週末に寝だめをしない。
□ 休日に夜ふかしはしない。
□ コンビニを利用するときは早めの時間に済ませる。
□ 就寝前はテレビ、パソコンやスマホなどのデジタル機器は見ない。
□ 日中は太陽の光を充分に浴びている。
□ 朝食で何かタンパク質の食品を摂っている。
□ ちょっとでも運動をする習慣がある。

チェック項目で8項目以上がYESなら、体内時計はきちんと整っていそう。NOが3つ以上ある場合は以降の記事を参考に今すぐ生活習慣の見直しを図ろう。

Q そもそも「体内時計」とは何ですか?

「一言でいうと、人間の体に備わる生体リズムです。朝起きたら昼間は活発に活動し、夜になると疲れて眠くなるという、一日の体に起こるリズムは体内時計のなせるワザです」(友野さん)

その体内時計には、親時計と子時計がある。

「脳にある視神経が交差する場所、視交叉上核(しこうさじょうかく)に中枢となる体内時計があります。これが”親時計”で、睡眠、覚醒、体温、血圧、心拍など、生命を維持するための生体リズムをすべて制御します」

さらに体の各所に”子時計”の末梢時計が存在。

「親時計と子時計はオーケストラの指揮者と奏者のような関係。同調すると体の健康が守られます」

Q コロナ禍には崩れやすい、と聞きましたが?

「人間の体に備わる体内時計は、”光”の刺激を強く受けます。今はステイホームの影響で、外で太陽の光を浴びる機会がめっきり減ったこと、さらにこれは住環境によりますが、一日中カーテンを締め切り外の光が入らない部屋にいると、昼夜の区別がつかなくなり体内時計が乱れる要因に」

また、リモートワークの普及で毎日定時に出社する必要がなくなり、起床時間がバラバラになってしまうと、やはり体内時計のリズムがズレる。

「起床時間が遅くなれば朝食やその後の食事のタイミングが後ろ倒しになって生活リズムが崩れ、体内時計にとってはますますマイナスです」

Q 崩れたままにしておくとどうなりますか?

「体内時計にズレが生じると、体の中で時差ボケのような症状が起こります。不眠、疲労感や倦怠感、食欲不振、頭痛などもそうです」

そのまま放っておくと、自律神経やホルモンバランスの働きにも影響しかねない。

「免疫力の低下をはじめ、肥満や糖尿病などの生活習慣病、うつ病のリスクが高まることも確認されています。また、何もする意欲が湧かず引きこもりがちになる、身だしなみに気を配れなくなる、協調性がなくなるなど、行動面に変化が表れることも。心身に大きな負担がかかる前に生活習慣を見直して体内のリズムを整えてほしいと思います」

\崩れ始めた「体内時計」を正常に戻すための工夫を、今日から始めよう。/

朝の光が体のネジを巻く。カーテンを開いて外を見よう。

朝起きたら窓際で空を見上げて体内時計をリセット。この際、目に光を入れることが一番重要なので目はつぶらないように。

体内時計は親時計も子時計も一日24時間10分でリズムを刻んでいる。

「地球の自転である24時間の周期より10分長く、そのまま何もしないとどんどんズレが大きくなり、心身に悪影響を及ぼします。そのため、体内時計は毎日地球時刻の24時間に合わせてきっちり調整する必要があるのです」

そのタイミングが「朝」。

「まずは起床時間を一定に。さらに朝起きたら真っ先に、窓際から1メートル以内の場所で空を見上げるようにしながら“太陽の光を15秒間、目に入れる”。太陽光が、目の網膜から親時計のある脳内の視交叉上核に届くと、それが合図となり親時計がリセットされます」

すると体を覚醒させるスイッチが入り、昼間は活動的に動けるように。

「同時に14〜16時間後に眠気が訪れるよう睡眠予約スイッチが押され、夜になると眠くなる。ムリなく自然に生活リズムが整っていきます」

子時計をリセットするのが朝食。一日のリズムは朝ごはんで作られる。

焼き魚や納豆は高タンパク質の優秀メニュー。決まった時間にいただいて、朝の体にスイッチを。

脳内にある体内時計の中核を担う親時計は、朝の光を目に入れることでリセットされる一方、「体の各所にある子時計は、近年、光ではなく、朝食を摂ることで24時間の周期に調整されることがわかってきました」。

朝起きてから1時間以内に朝食を摂ると、その刺激が臓器や筋肉など体のあちこちに組み込まれた子時計に伝わり、

「朝がきたよ」と伝える。

「その合図は、毎朝同じ時刻に規則正しく送られることが大事なので、朝食の時間も一定に。もし遅れても1時間以内におさめたいものです」

朝食の内容も重要だ。

「特に朝食で摂ると効果的な栄養素がタンパク質です。含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが昼間の元気を支えるセロトニンを作る材料となり、さらに夜には安眠を促す大切なメラトニンへと変換されます」

朝食で摂るなら、卵、大豆製品、魚、牛乳、バナナなどがタンパク質が豊富でおすすめ。

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