からだ

身体の専門家がアドバイスする、体内時計リセット法。

すっきり目覚めて元気に活動するために、実践するといいことのあれこれです。身体の専門家に話を聞きました。
  • 撮影・岩本慶三、青木和義 文・保手濱奈美

朝日で体内時計をリセット。身体を温めるなどの工夫も有効。

鍼灸師、臨床家 若林理砂さん

「朝、すっきりと目覚めるために最も大切なのは、朝日をあびることです」
と若林理砂さん。それは、光量が非常に強い日の光には、“体内時計”をリセットする働きがあるからだ。

「体内時計とは、日中は活動的になり、日が暮れるにつれて徐々に休息状態に入るという、人の身体に備わる生体リズムのこと。瞳孔から日の光が入ると、覚醒のためのホルモンが分泌されて、体内時計がリセット。新たな一日のリズムを刻み始めます。すると、夜はすみやかに眠れて、次の朝の目覚めがよくなるという好循環。こうして体内時計を整えて、睡眠時にしっかり疲れが取れていることが、気持ちよく起きるための大前提。そのうえで、朝の過ごし方を工夫すると効果的です」

若林さんは、朝日を目覚まし時計代わりに活用するべく、セットした時間になると自動的にカーテンが開く機械を使用。さらに、起きてから行うと目覚めの後押しとなる、いくつかの方法を教えてくれた。
「一つは、常温の飲み物を飲むこと。これは、胃腸を動かして体温を上げるのが目的で、人の身体には体温が上がると目が覚めるという仕組みがあるからです。また、自律神経のうち、リラックスを司る副交感神経ではなく、活動を促す交感神経を優位にするのもポイントに。朝から熱めの湯船に浸かると、その効果が得られます。体温も上がって一石二鳥です」

ほかにもすっきり起きるための一手や心がけがあり、詳しい方法とともに、以下、若林さんがアドバイス。まずは2週間、続けてみると寝覚めのよさが実感できるようになるだろう。

カーテンを開けて日光を部屋に取り入れる。

本体をカーテンレールに取り付けスマホでタイマー設定すると自動でカーテンが開く。めざましカーテンmornin’plus 7,538円(ロビット TEL:050-3636-7749)

「朝起きて真っ先にするといいのが、カーテンを開けること。朝日をあびて、体内時計をリセットしましょう。寝覚めが悪くて、起き上がってカーテンを開けるまでが一苦労という人には、自動的にカーテンを開けてくれるアイテムがおすすめです。目をつぶっていても、日光はまぶたを通して瞳孔に入ってくるので、自然と目が覚めてきます」
ただ、そうなると日の出前に起きなければいけない時は、どうしたらいいのだろう。
「身近な光のなかでもかなり強い、スマートフォンの光を利用する手があります。起きぬけに画面を見るのです。とはいえ、あくまで補助的なものと捉え、基本的には日光で目覚めるようにしましょう」

常温の水を飲み、身体を中から目覚めさせる。

起きたら、まずはコップ1杯の水を。排便を促すうえでも、水分を摂るのは有効。

「食べ物や飲み物を口にすると、胃腸が動き、体温が上がって身体の内側から目覚めます。起きてすぐに固形物を食べるのは難しいと思うので、液体で構いません。ただし、身体を冷やさないために、冷たい飲み物は避けたほうが無難です。手軽でおすすめなのは、常温の水。白湯やお茶、スープなど、温かい飲み物でもいいでしょう」

軽い運動で肩から背中を重点的にほぐす。

起きるのがだるくてつらいという人は、眠っているあいだに肩や背中の上のほうが凝り固まっている可能性があるそう。
「そこで試してもらいたいのが、目覚めてすぐの“ローリング運動”。床に仰向けに寝た状態から、脚を上げたり、上半身を起こしたりしながら、肩や背中の上部をほぐす運動です。朝行うのにちょうどいい軽い運動というと、ストレッチを思い浮かべる人も多いと思いますが、実はストレッチには、呼吸の仕方なども含めてきちんとした手順があり、セルフでそのとおりに再現するのは意外と難しいんです。でも、このローリング運動なら、背骨を支点にとにかくゴロゴロ転がればいいだけなので、とくにコツはいりません。身体が硬い人は、脚を無理に上げなくても大丈夫。自重を利用して、肩と背中の上がほぐれるのを感じられるのが大切です」

1. 仰向けから、上半身を起こしていく。痛ければヨガマットや布団を。
2. 脚を動かさないように背骨から腰の伸びを意識する。
3. 上半身を、腰から背中の順にゆっくり床につけ、脚を上げていく。
4. 足先ができるだけ遠くにいくように、脚とお尻を上げる。
5. 背骨のひとつひとつを意識しながら、脚を元に戻していく。
6. 5と同時に上半身も前に戻し、中腰になる。
7. 立ち上がりやすいように片方の足を引き、クロスさせる。
8. 立ち上がってフィニッシュ。とにかく無理せず、できる範囲で充分。

40〜41℃の、熱めのお風呂に入る。

どうしても目が覚めない、でも起きなくては……という時に、強制的にシャキッとする方法として取り入れたいのがこれ。
「シャワーではなく、湯船に浸かること。熱めのお湯で交感神経を刺激します。38℃くらいのぬるめのお湯だと、逆に副交感神経が優位になって、ますますぼんやりしてしまうので気をつけて。湯船に浸かると、水圧で血流が促され、体温の上昇にもつながります。これでどんなに寝ぼけていても、すっきり目が覚めるはず」

起きるための「朝の儀式」に縛られない。

「朝はこれを絶対にしないとダメ」というルールを作らない。

ここまで若林さんに、気持ちよく起きるための朝の過ごし方を聞いてきたが、時系列なら、カーテンを開ける、水を飲む、ローリング運動をする、熱めの湯船に浸かる、という順番。ただし、これをルール化する必要は決してない、と力説する。
「むしろ、そういう思い込みを持ってほしくないんです。『朝の儀式』を作った途端に、それが一つでもできないと、一日嫌な気分になってしまいますから」
メニューは4つあるが、それを全部取り入れても、いくつ省いても、それぞれ自由。
「日によって目覚めがよかったり、悪かったりとグラデーションは誰しもあるので、朝の過ごし方は日々変わって当たり前。その日の体調や時間の余裕を考慮しながら、臨機応変に取り入れましょう」

若林理砂(わかばやし・りさ)●鍼灸師、臨床家。アシル治療室代表。著書は『働く人の養生訓〜あなたの体と心を軽やかにする習慣』ほか。ペットボトル温灸の提唱者としても知られる。

『クロワッサン』977号より

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