暮らしに役立つ、知恵がある。

 

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

規律を重んじる自衛隊では、片づけや整理整頓の訓練も必須。そしてその技術が有事の際に役立つという。そのノウハウとは?

撮影・黒川ひろみ イラストレーション・三東サイ 文・小沢緑子

《さらに役立つ、サバイバル式片づけのヒント。》

[ヒント1]片づける場所ごとに散らかす。

片づけるためのスイッチが入らない場合は、”背水の陣”を敷いてどうしてもやらなくてはいけない状況を作り出そう。

「片づけたい場所を決めたら、中にあるものをすべて外に出します。その際、何が入っていたかを確認するためにもその場に散らかすように広げながら仕分けすることが大切」

部屋の中にモノが多すぎて何から手をつけてよいかわからないときも、この手順を踏むと捨てるための第一歩が踏み出せるという。

その後にゴミ袋などに「要るもの」と「要らないもの」を分けて、不要なものは捨てる。迷ったものは保留にせず、もう一度吟味して不要袋に入れたものはきっぱり捨てる、を繰り返せばかなり減らせる。

「ただし、一日ですべての箇所を片づけようとすると挫折しがちです。『今日はシンクの下』 『洗面台の下』『その次はクローゼットの中』などと、何日かに分けるのがいいです」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント2]収納することと整理整頓の違いを知っておく。

「モノを床やテーブルの上に積み重ねていくだけ、あるいは引き出しの中にポンポンと入れているだけで片づけた気分になってしまう人もいるかもしれませんが、残念ながらこれは片づけの範疇には入りません」

一見片づいたようでも、モノが収まるべき場所に収まっていないために、またすぐに部屋が散らかる、を繰り返す。

「片づけが下手で苦手意識がある人にぜひ知ってほしいのが、片づけの技術には2種類があること。それが(1)収納、(2)整理整頓で、それぞれが果たす役割が違います」

(1)の「収納」はモノが収まるべきスペースを確保しそこにきちんと収めていく技術、(2)の「整理整頓」はモノがすぐに取り出せるように見やすく分類していく技術。

「収納した後はきっちりと整理整頓。両方をセットで行ってこそ、初めて散らからない部屋作りができます。根本的に片づく部屋に変えましょう」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント3]スペースを確認してからモノを購入。

「片づけを始める前に張り切ってボックスやケースなどの収納グッズを買い揃える人もいますが、実は順序が逆。まずは不要なものをどんどん処分して最小限に絞ってから、それに見合ったサイズの収納グッズを選びましょう」

さらに、自宅の収納スペースに収まる量が自分が所有できるものの上限、ときっぱりと決めてしまうのがおすすめという。

「不要なものが家じゅうに溢れて片づかない生活から解放されます。モノに頼らなくても快適な生活へとシフトするチャンスです」

またこの際、モノの買い方も見直しを。

「新しいものを買うときも、収納スペースのサイズを基準に選びます。たとえば、毎日使う食器などの日用品は種類や形がバラバラで収納場所にしまいにくければ思い切って処分し、コンパクトに重ねて収納できるタイプに買い替えるのも一案です」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント4]頭より上に壊れ物は収納しない。

災害時の避難口となる場所を塞がないように家具をはじめ大きなものの配置に気を配る重要性は「心得4」で紹介したが、割れやすいものにも注意が必要だ。

「自衛隊の訓練には手榴弾から身を守るものもありますが、手榴弾は爆発した後に飛び散る破片が危険で致命傷を負う可能性が高いんです」

食器などの壊れ物も、地震が起きれば”破片”によるリスクがある。

「たいして重さがないものでも高い場所から落ちて割れると、思った以上に広範囲に破片が飛び散ります。災害時はパニックになりがちなので、少しでも家の中のリスクは減らしたい。頭より上には重たいものはもちろん、割れやすい皿、コップ類などは収納しないことです」

また、地震の際は収納スペースに収めていても倒れたり、何かの拍子に中からモノが飛び出す危険性も。

「転倒防止や飛び出し防止用の器具で固定して防ぐことも忘れずに」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント5]モノの面をぴしっと揃えてラクに美しく。

自衛隊の宿舎では大勢が共同生活をしているのに、どこもかしこもチリひとつなく整っているという。

「”面(ツラ)を揃える”という言い方をするのですが、ロッカーや引き出しの中に入れたものの角や端を一分の狂いもないほどぴしっと直角に合わせて整理整頓することも徹底的に教え込まれます」

面を揃えておけば見た目が美しいだけではなく、

「収納したものが一目瞭然のうえ、必要なものがすぐに取り出せて合理的。また、常に整然と並ぶ同じ状態を保つことで、万が一、侵入者がモノの位置を少しでも動かしたり何かを抜き取ってもすぐわかり即座に対応することができます」

このモノの角や端を揃えて整理する技術も、日常生活に取り入れれば防犯対策に大いに役立つ。普段からモノの向きが曲がっていたり、乱れていることに気づいたら、すぐに直すクセをつけておくだけでもいい。

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント6]収納場所は書き出してリスト化を。

「人は家があるからこそ、どこに出かけてもちゃんと同じ場所に帰ります。それはモノも一緒で、帰るべき家である『モノの定位置』をあらかじめ決めておけば、使った後は自動的にその場に戻すだけでいいのでラクです。やたらと散らかることも少なくなるはずです」

そのモノの定位置、すなわち収納場所をノートなどに住所録のようにメモしてリスト化しておくのもおすすめという。

「自衛隊時代の習慣のひとつで『図式作り』と呼んでいますが、モノを収納した場所を一覧表にしておくと、同じ部隊の誰もが自分がいないときでも『何が』 『どの場所』に収納してあるかすぐわかるし共有できる。頭の中も整理されるので『あれはどこにしまった?』とモノが迷子になることも防げます」

特に家族揃って使うものや防災グッズなどの管理にも便利だ。家族の目につく場所に置いておこう。

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。

[ヒント7]リビングに私物は絶対に持ち込まない。

家の中でも散らかりやすいのがリビング。さらに外出先から帰ってきた家族が私物を持ち込み置きっぱなしにするクセがあれば、いくら片づけても雑然とした印象に。

「防災面から見てもリビングが散らかっているのは、何かあったときの逃げ口に障害物がたくさん置かれていることになり危険。
家族の防災意識を高めるためにも、まずは『リビングには私物を持ち込まない』というルールを作りましょう。理想はロボット掃除機がスムーズに動けるスッキリしたリビングです」

さらに共有スペースの片づけを徹底させるなら、風呂場にシャンプーやボディソープ類を置かず、使うときだけ”お風呂セット”として各自が持ち込むルールを作るのもよい。

「共有スペースこそ、家族揃って協力しあえる場。散らかさないためにはどうすればいいかシミュレーションしながら片づけていくのもいいと思います」

“いざというとき”を念頭にした、自衛隊式サバイバル片づけ術。4つの心得と7つのヒント。
  • 畠山大樹

    畠山大樹 さん (はたけやま・だいき)

    「お掃除レンジャー」社長

    1990年、北海道生まれ。22歳から陸上自衛隊第1空挺団に所属。現在はホテルをはじめ宿泊施設を中心に、月間約1000件の清掃業務を請け負っている。

『クロワッサン』1041号より

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