くらし

【紫原明子のお悩み相談】周りのママを見て罪悪感を感じています。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが、読者のお悩みに答える連載。今回は一人っ子の娘に対して申し訳なく感じている女性からの相談です。

<お悩み>

結婚が38歳と遅く、そのせいもあり子供は不妊治療の末41歳に女の子を授かり、42歳目前で産みました。やっと出来た子供で、1人でも出来たら奇跡だと思い、産んだ後は1人でいいと思っていました。 1年の育休を経て復帰し、47歳の今も正社員で働いてます。娘を保育園に入れていますが、年少、年中になるにつれ、周りのママさんたちは2人目を次々妊娠出産してきました。その度に、もう1人欲しいという思いはどんどん強くなるけれども、もう望めない、それに娘は一人っ子、兄弟を作ってあげられなかった罪悪感に苛まれ、産まれてからずっーとしんどく、むしろ1人しか産めないなら授からなくても良かったのではと思う程です。 結婚も遅かった、また不妊治療に踏み切れなかった、全ての決断は自分でしたのに、2人目欲しかった……でも出来なかったし努力もしなかった……悔しい、悲しい、2人目出来た人が羨ましい、こんな事を未だにグルグル考えては泣いています。 この先、子供に対して兄弟を作ってあげられなかったことに対して罪悪感を持ち続けて生きていかなければならないのかと思うと、死にたくなります。 一人っ子ということをどうやって受け入れたらいいのか……、アドバイスお聞きしたいです。 ネットで、「一人っ子  かわいそう」などで検索し、一人っ子で良かった!とか兄弟がいても仲が悪いです、と言う書き込みを探しては安心したりしています。

(バブルス/女性/経理の仕事をしている47歳の会社員です。今5歳の娘が1人います。)

紫原明子さんの回答

バブルスさん、こんにちは。お2人目を望まれていたんですね。叶わないと思うほど苦しくなってしまいますね。ただ、バブルスさんはあまりに深く思い悩まれるがゆえに、やや本末転倒になってしまっているところもあるようにお見受けします。というのも、バブルスさんの抱えていらっしゃる罪悪感というのは、ご自分の思う望ましい環境を娘さんに提供してあげられなかったことへの罪悪感ですよね。そして望ましい環境を提供してあげたいと思うのは、娘さんにより幸せな人生を歩んでほしいからではないかと思います。にもかかわらず、一人しか産めないなら授からなくてもよかったなんて言ってしまうと、娘さんにとってはそちらのほうがより深刻な問題になってしまうと思います。娘さん自身は少なくとも今後、しばらくは与えられた環境で生きていくよりほかなく、もしかしたら誰かに言われない限り、一人っ子である自分を可哀想だと思わないかもしれません。にもかかわらず、バブルスさんが罪悪感を抱えていたり、自分が生きていることを手放しで喜んでもらえないとしたら、娘さんはそんな中で一体どうやって自分を受け入れ、幸せな人生を歩んでいけばいいのでしょうか。

そして実をいうと私は、一人っ子を可哀想だと思ったことがないので、そもそもどうしてバブルスさんがそんなにも一人っ子について罪悪感を持たれるのかも不思議なんです。日常的に兄弟との触れ合いで得られるものが得られないからでしょうか。ならば一人親家庭で育ったうちの子たちはお父さんとの触れ合いで得られるものを得られていないのでかわいそうでしょうか。祖父母と同居している子供が得られていることを得られない格家族世帯の子供はかわいそうでしょうか。ペットを飼っていない家の子供はかわいそうでしょうか。庭のない家で育つ子はかわいそうでしょうか。

子供が育つ上でより良い環境を与えてあげたい。親としてそんなふうに思われる気持ちはとてもよくわかります。だけど、それができないからといって死にたくなってしまったらやっぱりそれは本末転倒だと思うんです。

昔バラエティ番組でやっていました。サザエさんの磯野家と同じ構成の家族を日本中探したけれど、結局一つも見つからなかったそうです。多くの人が標準的な家族として思い描く磯野家は、現実には存在していない可能性が高いのです。そして実際に周りを見渡すと、一人親家庭も、格家族も、そして一人っ子も、もはやまったく珍しいものではありません。そう考えると、家族の形がこうでなければ不幸、と考えること自体が自分を幸せから遠ざける材料にしかならないと思うんです。

娘さんには兄弟がいないかもしれないけれど、その代わりご両親からの愛情も手間も一身に受けて育つことができます。ないことに意識を向ければ得られないことばかり目につくけれど、一方でないことによって、あることでは得られない日常が得られると思いませんか? もちろん、ときにはないものに憧れを持つことも必要でしょうが、それがどうしても得られないものであれば、今手元にあるものの価値を思い出し、自分がそれを大切にすることでどんなに幸せだったかを思い出すことも必要だと思います。そしてそんなふうに、得られる幸福を見つけながら生きていく親の姿を見せることが、娘さんの将来にとって、何より良いギフトになると思うんです。

後悔もあるでしょうが、今のバブルスさんが深く苦しまれているように、過去のバブルスさんだってきっと、そのつど深く悩み苦しみながら、今につながる決断を下してこられたのだと思います。周りのママさんたちを見て過去の自分を責めることばかりせず、どうか少しでもバブルスさんが今持っているもの、今いる場所に目を向けて、得難い環境へ自分を導いてくれた過去の自分を認めてあげられるといいなと思います。

……と、ここまで色々書いてきましたが、お手紙の中でもう一つだけ気になったのは、娘さんが産まれてからずっとしんどいと書いていらっしゃることです。もしかしたら出産後のホルモンバランスの乱れが、バブルスさんから冷静さを奪って、気持ちを普段より余計に落ち込ませているのかもしれません。もしあまりにもネガティブな思考が止まらず、またそれが産前のバブルスさんにはなかったものであったとしたら、一度病院に相談されてみるのもいいかもしれません。バブルスさんが、ご家族との日々を少しでも穏やかに過ごせるようになることを祈っています。

紫原明子さんへのお悩み相談はこちらから!

イラスト:わかる
紫原明子

紫原明子 (しはらあきこ)

1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。