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離婚した場合の元夫の年金は? 生命保険はどうなる?

長生きするのはいいけれど、心配なのが老後の備え。不安を解消するには、自分を取り巻くお金の状況を把握することから始めよう。ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士の井戸美枝さんに教わります。
  • イラストレーション・矢部太郎 文・太田祐子

離婚した場合、元夫の年金はもらえるの?

結婚し、夫の扶養家族として暮らしたあと離婚した場合、婚姻期間中の夫の年金の一部が分割される。

「でも、たとえば元夫の年収が約500万円、婚姻期間が9年として、月1万円程度です。当然ですがそれも離婚してすぐもらえるわけじゃない。65歳からです。長年連れ添った熟年離婚でも5万円くらいでしょうか」

ただ、離婚時に年金分割の手続きをしていれば、相手が再婚しようが死亡しようが年金は受給できる。

「公的年金ですから、そこは慰謝料などと違って確実です」

ちなみに専業主婦(夫)など第3号被保険者の年金分割は強制となり、配偶者の同意がなくとも年金の半分を受給できる。

「だから男性誌などでは、妻を専業主婦にするのは危険、と(笑)。悪妻であった場合も半分持っていかれるのは割に合わないということなのでしょう」

夫の扶養範囲内ではなく厚生年金をもらえる職につくほうが年金は増える。

ひとりになったら生命保険はどうする?

60歳を過ぎると若い頃に入った生命保険などが満期を迎える人も多い。

「子育ても終え、夫婦ふたり、もしくはおひとりさまで暮らすなら、働き盛りのときに必要とした高額な死亡保障はいりません。新しく保険に入ろうと金融機関や保険会社に相談すると外貨建ての個人年金などを勧められるかもしれません。
これは運用などにかかる手数料がわからないブラックボックスの部分が。為替の影響も大きく受けますから私なら入りません」と井戸さん。

医療保険だけ入るという手もあるが、それも考え方次第だという。

「平均入院日数は64歳までで21.9日、65歳以上で37.6日。1日1万円の入院給付金をもらえるように月々1万円の医療保険に入ったとして、年間の支払いは12万円、5年経てば60万円。実際入院して、1日1万円かかってもこの60万円があれば60日間入院できます。

とすると、使うかどうかわからない保険よりも60万円を貯金しておいたほうがいいと思います。60歳で満期になる保険があるなら全額を受け取って、保険として現金をストックしておく。ただこれは絶対に生活費に回さないと決め、定期預金にするか個人国債を購入するなど引き出しにくいところに預けておくことが重要」

健康保険の高額療養費制度など医療機関や薬局に支払う医療費が健康保険の定める上限以上は負担がないしくみもある。

ただ、がんなどで最先端の治療を受けたいなど希望があるなら、がん保険など特化したものに入っておいたほうがいいかもしれない。

井戸美枝

井戸美枝 さん (いど・みえ)

ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士

経済エッセイストとしても歯切れ良い解説にファンの多い井戸さん。著書に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』など。

『クロワッサン』1038号より

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