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【紫原明子のお悩み相談】出会い系サイトのメールを彼に見られました。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが、読者のお悩みに答える連載。今回は結婚の話をしてこない彼との関係にモヤモヤしている女性からの相談です。

<お悩み>

私にはお付き合いをして2年4ヶ月になるバツイチの彼がいます。 最近私はなかなか結婚の話をしてこない彼に痺れを切らし出会い系サイトに登録だけしていました。 そんなある日、彼と私の携帯を見ていたら何と出会い系サイトからのメールが送られてきて、彼に見られてしまいました。

その時は何も言わなかったのですが、顔は怒っていた感じでしたし、私も隠しておかないと思いまして、彼に「私は将来不安だから結婚したい気持ちがある」とハッキリ伝えました。 そしたら彼は障害を持った息子がまだ成人してないし、今後もずっと面倒みなければいけないかもしれないから、全く今は結婚は考えていないと。だから私は将来ずっと1人でいるの? まあ貴方ならまた素敵な人に巡り合えるから大丈夫!と言ったらちょっと動揺した様子でした。その後別れを告げられるかと思いきや「ずっと仲良くしよう」とか「コロナが落ち着いたらどこかドライブに行こう」と。

翌日私が寝込んでしまいずっと彼は看病してくれたのですが、その際いろいろ考えたのでしょうか?何かあったらちゃんとフォローするから心配しないの。とか、「来年また河津桜見に行こう」などと言ってくれました。また彼の息子さんの障害について詳しく説明してくれたり、自分は以前ガンを患ってるから再発が心配とか、ご先祖様がお亡くなりになった原因まで話してくれたんです。彼をこれからも支えてあげたいとは思うのですが、正直迷ってしまっています。

(ちゃあ/女性/IT企業の営業事務をしている50代の派遣社員です。 高校2年生と社会人の息子が2人いるバツイチ女性です。)

紫原明子さんの回答

ちゃあさんこんにちは。お悩みを打ち明けてくださったのにこんなことを言うのも恐縮ですが、私はちゃあさんのお手紙を読んでとんでもなく勇気づけられました。恋人がいても、将来の不安のため出会い系サイトに登録しておくというそもそもの行動力。またそれが恋人にバレても堂々と正当性を主張できる屈強な胆力。そこで相手から結婚の意思がないなんて言われればショボーンとなって終わりそうなところ、「だから私は将来ずっと一人でいるの?」と鋭くもチャーミングに切り返せる機転。私は惚れ惚れしました!

このお悩み相談にも、離婚経験のある女性や大人の女性からたくさんの恋愛相談をいただきます。皆さんのお手紙を拝見していると、自分の本当の望みをパートナーにそのまま伝えることがいかに難しいことかとひしひしと感じます。相手からどんなに不誠実な態度をとられても別れられないという人、自分のバックグラウンドや年齢を根拠に、この人を逃せば次はないかもしれないと考える人が、残念ながら少なくないのです。本当なら美味しい果物として堂々と高級フルーツの棚に並んでいるべき人たちが、自分の価値に気付かぬまま、自から見切り品の棚に並びに行くかのようで、これは本当に悲しくなります。あなたは高級フルーツですよ、とどうしたら伝えられるのか。いつも思い悩んでいます。

だから、自分を不必要に卑下せず、自分の気持ちを率直に伝えられるちゃあさんは本当に素晴らしいと思いました。お手紙によると、彼もいろいろな事情を抱えていらっしゃったんですね。これまでのお付き合いの中で、そのことをちゃあさんに話さなかったということ。彼はさぞ孤独だったことでしょう。すべてを話せばちゃあさんが離れていくかもしれない。ちゃあさんに自分の人生を背負わせてしまうかもしれない。それならすべて隠して、上澄みの楽しい部分だけを一緒に味わえればそれでいい。そんなふうに思って、自分だけで抱えようとしてこられたんですね。何も知らないちゃあさんとの時間は、もしかしたら唯一そんな彼を、心配事や苦悩の多い日常から切り離してくれる、眩しい非日常だったかもしれません。

障害を抱えた息子さんをひとりで育てながら、自身も癌を患っている。自分の身に今後もし何かがあれば……そんなことを考えると、ちゃあさんを大切に思うからこそ簡単に結婚を切り出せない彼の気持ちも、とてもよくわかります。そして、彼を支えたいと思うも踏み切れないというちゃあさんの気持ちも、やっぱりとてもよくわかります。

今考えなければいけないことは、ちゃあさんがこれからも充実した人生を送るために、何を一番必要としているか、ということだと思います。この答えは人によって実にさまざまなので、誰かに聞いても答えは出ません。むしろ今現在のちゃあさんの心の中と、これまでちゃあさんが積み重ねてきた選択の中に、そのヒントが眠っているはずです。職場や結婚や、出産や離婚。ちゃあさんが選択されてきたことのひとつひとつを思い起こしてみてください。その都度、ちゃあさんの原動力となってきたものは一体何だったでしょうか。

将来性・安定性を重視してきたのか。面白そうだと思う好奇心に突き動かされてきたのか。退屈を嫌い、刺激を求めてきたのか。あるいは動物的な快楽に従ってやってきたという人もいるかもしれません。何かを決めるとき、私たちは必ずしも一般的な尺度だけでは決めていないはずで、特に離婚を経験した人なら余計にそうだと思います。社会的には、夫婦は死ぬまで添い遂げるもの、という通年が未だ根強い中で、結婚生活の終わりを選択されたのは、一般の基準から逸脱してもちゃあさんだけにフィットする生き方があったから、それを選びたかったからではないでしょうか。ではそれらの選択の裏側で、意識的にでも無意識にでも重きをおいてきていたものが何だったのか。優先順位の上の方にあったものは何だったのか。これを掘り起こしてみると、ちゃあさん独自の尺度が見えてくるかもしれません。で、そうしたらぜひ、今の彼とその息子さんと家族になるという選択が、その基準に沿うかどうかを考えてみると良いと思うのです。

その上ではもちろん、彼の息子さんとも会われてみるべきでしょう。障害のあるなし、という単純な情報だけでは伝わりきらないものがきっとあるはず。また彼がひた隠しにしてきた日常の断片が彼の家庭の中にもきっとあるはずで、それをちゃあさん自身の目で見て、感じることで、彼と家族になるということがどういうことなのか、具体的に想像できるようになるでしょう。また、ちゃあさんの息子さんのうちのお一人は未だ高校生ということなので、そもそも彼が新しい家族を望むかどうかという確認も必要ですね。

病気や障害とともに生きる人の新しい家族になるという選択は、確かに決して簡単なことではないだろうと思います。ただ、人生の中で結婚や再婚によって他人ではない人が増えていくというのは、そもそもそれ自体が多分に面倒なことで、じゃあ私たちはなぜ面倒でも他人と生きようとするのか。それは本当に将来の不安を解消するためだけなのか。面倒でなければ幸せなのか。そういうこともぜひ考えてみたいですね。そして考えを深めていった末にはきっと、先に述べたような、自分の人生において不可欠なことの発掘作業に行きあたるのではないかと思われます。

……が。そうはいっても、ちゃあさんならもしかしたらもう既にご自身の中に、かなりはっきりした答えを持っていらっしゃるかもしれませんね。人がどう判断しようが、ご自身が最も大事にしたいこと。それがこの先より多く望めそうな道を正直に選ばれさえすれば、きっと間違いはないはずだと、私は思います。

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イラスト:わかる
イラスト:わかる
  • 紫原明子

    紫原明子 (しはらあきこ)

    1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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