暮らしに取り入れやすい民藝うつわの魅力と使い方。
暮らしに取り入れやすい民藝うつわの魅力と使い方のコツを『工芸喜頓』の石原文子さんに聞きました。
撮影・深水敬介 イラストレーション・村松佑樹 文・輪湖雅江
『工芸喜頓』が選ぶ、おいしいうつわ。
「民藝のうつわを探す時のコツをひとつ挙げるなら、まずは”自分や家族がいちばん大事にしている食事”のためのアイテムを選ぶということです。朝のコーヒーを欠かせない方ならマグカップ、家族で食べる夕食が大切な方なら大鉢、というように」と石原さん。ここでは『工芸喜頓』が扱う全国のうつわの中から、普段の料理をおいしく見せ、食事の場を楽しくするものを紹介。
【熊本】小代焼 ふもと窯(しょうだいやき ふもとがま)
野菜が映える藁灰釉は柳宗悦のお気に入り。
かつて肥後藩の御用窯だった小代焼。ふもと窯は井上泰秋さん・尚之さんの父子による名窯。「“藁灰白(わらかいはく)”と呼ばれる青白い藁灰釉(わらばいゆう)が特徴で、緑色の野菜がよく映えます。五寸丼は麺丼にぴったり」。
【島根】湯町窯(ゆまちがま)
飲み心地がいい蜂蜜色のスリップウエア。
民藝運動を牽引した陶芸家バーナード・リーチ直伝の技法を継承する、布志名焼の名窯。「湯町のマグカップは絶品。持ちやすく飲み心地がよく、眺めるだけで元気になる美しさです。ピッチャーは水にもワインにも使える小さめがおすすめ」。
【沖縄】 まさひろ工房(まさひろこうぼう)
熱々おでんが合う“やちむん”の碗。
登り窯で伝統的な焼き物をつくる仲村まさひろさん。「マカイ(碗)は麺やご飯に加え、おでんや練り物も合う。ポテトチップスを盛っても」。
【兵庫】丹波焼 俊彦窯(たんばやき としひこがま)
海外にもファンが多い洋食も映えるデザイン。
陶芸家・河井寛次郎の孫弟子にあたる清水俊彦さんの窯。「洋食にも合う小鉢は、買い足しする方も多い人気アイテム。長角皿は魚の切り身がぴったりです。家族の人数分そろえるとうつわの魅力が際立ちます」。
【広島】惣堂窯 掛谷康樹(そうどうがま かけややすき)
食卓が華やぐ、練り上げの深鉢の存在感。
異なる色の粘土を組み合わせて作陶する伝統技法“練り上げ”に魅せられ、作陶を始めたつくり手。「料理を盛った時のカッコよさには、やみつきになる魅力がある。手に持った時のコロンとした丸みや厚みも心地いいんです」。
【愛知】瀬戸本業窯(せとほんぎょうがま)
料理好きを魅了してやまない名窯の片口。
丈夫で美しい白い土と多彩な釉薬を生かしたうつわにファン多数。「片口は麦とろや煮物が抜群においしく見えます。ドレッシングで和えたサラダや汁気が出てしまうおかずも、口があるから水切りしやすい。卵を焼く時にこの中で溶いて混ぜて……とボウル代わりに使うのも楽しいです」。
【島根】森山窯(もりやまがま)
使うたびにうれしくなる、滋味深い美しさ。
河井寛次郎に師事した森山雅夫さんの窯。「呉須釉や瑠璃釉のうつわも有名ですが、私のイチオシは灰色の糠釉。里芋の煮物、もやしと豚肉の炒め物、ささみとキュウリの和え物など、色の強くない料理がとてもきれいに映える。現代作家のうつわや洋食器との相性もいいんです」。
※この号で掲載したうつわは、作家ものなど、雑誌発売時に店舗に同じものの在庫がない場合もあります。ご了承ください。
『クロワッサン』1032号より
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