くらし

【歌人・木下龍也の短歌組手】帰り道のカレーの匂いで泣きそうになる。

第41回全国短歌大会大会賞を受賞して以降、精力的に活動を続ける歌人・木下龍也さんが読者の短歌にコメントをする連載『短歌組手』。今週から毎週金曜日夜に更新をしていきます。短歌の応募もぜひお願いします。
書店にて。

〈読者の短歌〉
もう二度と逃がさないため両の手にさくらんぼに似た手錠をかける
(稲井亮太/男性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
「さくらんぼ」と「手錠」。シルエットはとても似ているのに、僕の頭のなかでこんなにも結びついていなかったものはないかもしれません。かけ離れた性質を持つ物同士を巧みにつなぐすばらしい1首です。

〈読者の短歌〉
青いホチキスで書類をとじるような1秒キスをすぐにください
(ななぽっぷ/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
そんな事務的なキスに心を整理されてしまってくやしくないのか(煽り)。

〈読者の短歌〉
湯上りの自分の匂い吸い込んでまだ女子だって安心するよ

(新妻ネトラ/女性/テーマ「匂い」)

〈木下さんのコメント〉
それは石鹸の匂いだろ!(煽り)。

〈読者の短歌〉
無いことにされてしまった文字を読む

修正テープの裏を透かして
「修正テープで消された文字があると、なんとなく裏から見てしまうクセがあります。」
(平井まどか/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
めの裏にぬって書いてあったりしますよね。誤字って人間っぽくて好きです。正しさをつくろおうとして努力した痕跡もやっぱり人間っぽくて好きです。

〈読者の短歌〉
万華鏡渡す 美しさを君に 君の無防備な姿を僕に
(半島/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
画期的な罠の発明。万華鏡を覗く姿は「君の無防備ランキング」3位くらいには入りそうですね。ちなみに1位は寝顔、2位はキスに目を閉じるとき、です。うまくいけば3位から順にご覧いただけます。

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