くらし

退屈な作業、退屈じゃない人生。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

私は20年間アニメーションを作り続けている、マイペースに。テレビや映画産業でのアニメーション制作とはペースも規模も違うけれど、それでも私にとって制作工程は苦痛以外の何物でもない。アニメーションは代わり映えのしない絵をチマチマと沢山描いていく作業がメインで、退屈で大変な作業だ。

私が表現活動をする上でこの手法を選んだのも、この作業に適さない人間が一生懸命取り組んだら、今まで見たことのない表現が生まれるかもしれないという期待からだった。未だにこうやって活動を続けられているのも、その目論見が成功したからと言えるとは思うが、当初からずっと変わらず、苦痛は続いている。楽になることなんてない。

だからこそ、「忍耐強くがんばる」こと以上に大切なのは、「自分を飽きさせない工夫」だ。
テレビを見ながら、ラジオを聴きながら、散漫な状況の中で作業を進めることで、今、同じような絵の何枚目を描いているかを意識させないようにする。
また、通常なら、用紙一枚に1コマの絵を描くものだけれど、一枚の中にできる限り多くのコマを描き、使用する紙を少なく抑えることで、「そんなに沢山描いてない」と自分を勘違いさせながら作業を進めていくことも重要だ。
全工程を把握し、あとどれだけの工程が残っているかということを洗い出すのも、締め切りが迫ってくるまでは絶対にやってはいけない。もちろんそのせいで、締め切り間近は大変な思いをするが、計画的にやらないことが、投げ出さない唯一の方法だから仕方ない。そして、活動をスタートした当初、「いつやめてもいい」という思いでいたからこそ、今も続けているのだと思う。

自分の性(しょう)に合わない仕事を選んだことで、細かい作業は苦痛だけれど、人生は退屈じゃなかったな、と感じている。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/ にて。

『クロワッサン』1028号より

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