「香り」が心の支えになることもある。【杏 喜子さん×草場妙子さん 対談】
撮影・MEGUMI 文・入江信子
この瞬間がキラキラしていられるような香りをまとう。
草場 初めてお会いしたのは、3年ほど前でしたっけ? 杏さんのブランド「ダウンパフューム」で香りのカウンセリングをしていただきました。
杏 そのときの診断では、草場さんの肌の香りは、かなり甘かったんですよね。スキンタイプでいうと「スイート」。
草場 香りのスキンタイプは年齢によって変わったりもするんですか?
杏 代謝リズムとホルモンバランスが関係しているので、変わる場合もあるんですけど、変わらない人も。もう一度、いいですか?(手首の香りを嗅ぐ) ああ、やっぱり「スイート」ですね。3年前にはカウンセリングの結果、ヒノキや白樺、ベルガモットを中心とした「ベジマット」というフレグランスをおすすめしたのを覚えています。
草場 今はどうでしょう?
杏 好きな色とか、目がいってしまう色ってありますか?
草場 メイクではイエローですね。
杏 これかなあ、「タージガーデン」。サフランとマリーゴールドの天然香料の色が濃くて、液の色が黄色いんですけれど、甘さのない樹脂に近い香りのマリーゴールドにジンジャーリリーという花の香りがミックスされていて。今の草場さんのイメージです。
草場 (嗅ぐ)わあ、百合っぽいいい香りが。でも、エレガントに香るのではなくて、凛としていますね。すごく好みです。
杏 透明な明るさ、聡明な明るさがある、「ベジマット」と同じ「浄化」のシリーズのフレグランスです。
草場 「ベジマット」とブレンドしてもいいんですか?
杏 はい。ブレンドすると、視界をワイドに明るく照らしてくれる感じ。新しいことにチャレンジするときにもいいですし、同じ毎日でも、つければ少し視点が変わる。
草場 ちょうど、新しいことにチャレンジしたい気持ちなんです! スキンタイプとは別に、年代や気分で似合う香り、欲する香りは違ってくるものですか?
杏 はい。自分を振り返ってみても、10代、20代の頃は、背伸びして、大人っぽいフレグランスをつけていたような。若い人は大人っぽく見られたほうがうれしいし、背伸びしている感じも初々しくて可愛いんです。しかし、それをいつまでも続けていると、清潔感が失われて、「今ここに生きている感」が感じられなくなる。生きているっていうライブ感がない人、つまりちょっと古い人という印象になる。それはもったいないこと。やはり現在、この瞬間を受け止めて、生きているほうが素敵ですから。「過去の自分がいちばんキラキラしていた」と思うのではなく、女性はいくつになっても、今、キラキラしていてほしい。
草場 メイクも同じで、今日、自分がするメイクを、ちゃんと自分で見極めて選んでいるかどうかというのが、重要だと思っています。時短メイクとか、目を大きく見せるメイクとか、いろいろありますけれど、そういうことだけではなくて、きちんと自分自身が選択したメイクをすることが、本当の意味でのメイクアップの楽しみにつながっていく。香りに対する考え方も、それに近いんではないかと。
杏 今は「装うこと」を省略する方向に世間がいってしまっているのかも。メイクがマスクで隠れちゃうというのもあるし。
草場 実は私、自宅待機期間以前は、恥ずかしながら、家の中ではほぼスッピンだったんですよ。それが心地よくて。でも、常にマスクをして外出するという状況になって、私、口紅が大好きなんですけれど、「いつどこで塗ればいいの?」って。同じ頃、家の中ですることはいっぱいあるのに、なにか手につかず、1日をロスしたというような日が続いて。そこで「形から入ってみれば……。そうだ、家の中でメイクしてみよう!」と思い立って、メイクを始めたら、シャキッとしました。
杏 フレグランスもそうですね。私も以前は、お出かけ前にまとい、家に帰ってきて、仕事は終わり、はい、リセットというときに違う香りをつけていたので、在宅期間は一体どのタイミングでつけようかと悩みました。けれど、ここは頭で考えずに、とにかくつけたいものをつけようと考えて、結局、「ベジマット」とルバーブの香りの「アメ」を1:1で重ねて、そればっかりに。
草場 きっと杏さんの心がその香りを欲していたんですね。
杏 そうなんです。モヤモヤを吹き飛ばしつつ明るい未来を思い描きたくて。
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