スキンケアからデリケートゾーンまで。女性目線の防災お役立ちアイテム。
撮影・岩本慶三 文・一澤ひらり
防災グッズで見落とされがちなのは女性に欠かせないもの。東日本大震災を仙台の職場で被災した資生堂ジャパンの松田佳重子さんはこう話す。
「激震でオフィスはモノが散乱して歩くのも危険なのに、女性社員はスカートとパンプス、ストッキング。あとで調達した靴下がどれだけありがたかったことか。しかも会社に泊まることになり、3日間コンタクトレンズはつけっぱなし。備えることは自分の命を守ることだと痛感しました」
同じく仙台で被災した整理収納アドバイザーの澁川真希さんは、自宅で避難生活を送った。
「水道の復旧に1週間かかり、水を使わずにいかに快適に過ごせるかが課題になりました。ドライシャンプーを使ったり、アロマオイルを数滴垂らした水で体を拭いたりしていました。清涼感のあるものに助けられましたね」
国際災害レスキューナースとして被災地での経験豊富な辻直美さんは言う。
「避難所では見ず知らずの人たちと限られた空間で過ごすことになり、男性主導で避難所運営が行われることが多く、女性のデリケートな問題をフォローできないのが実情です。生理用品などの用意は自分で心がけるしかありません。災害がいつ起きるかはわからないので、普段から必要最低限のものは持ち歩くようにしたいですね。それだけでも防災意識は高まります」
被災したら生き延びることが先決。しかし女性としてつらい思いをしないで被災生活を送れるよう、事前に準備はしておきたい。3人にとっておきのお役立ちアイテムを教えてもらった。
松田佳重子(まつだ・かえこ)さん
資生堂ジャパン ブランド営業本部美容マネージャー。東日本大震災の避難所においてスキンケア3万セットを手渡す一大プロジェクトを担った。
澁川真希(しぶかわ・まき)さん
整理収納アドバイザー。整理収納サービス「コンフォートスタイル」代表。被災体験をもとに「減災整理セミナー」を開催して、防災の普及活動に勤しむ。
辻 直美(つじ・なおみ)さん
国際災害レスキューナース。25年の実績を持ち、被災地派遣は国内19件、海外2件に及ぶ。現場での経験をもとに防災の講演や執筆を精力的に行っている。
[お役立ちアイテム]スキンケア
肌を整えることは自分をいたわることに。
メイク落とし
「避難所だとなかなか洗顔ができません。これは洗顔料としても使え、そのままティッシュオフできるので、水要らず。樹木の清々しい香りで癒やされます」(松田さん)。
眉墨
「避難所で女性たちにスキンケアセットを手渡したとき、一番喜ばれたのは眉墨。マッチの燃えカスで眉を描いていた方もいました。マスク必須のいま、眉はメイクの最重要ポイントです」(松田さん)
白色ワセリン
「肌にやさしい保湿剤のワセリンの油分が水分蒸発を防いで、皮膚を保護してくれます。肌はもちろん、ハンドクリームやリップクリームにも使えて、万能アイテムとして重宝します」(澁川さん)
オールインワンジェル
「多機能ジェルがひとつあれば、スキンケアをカバーできます。肌のお手入れは自分をいたわることにもつながりますよね」(松田さん)。
手鏡
「被災すると気持ちが沈んで、自分の身なりなど二の次になってしまいがち。そんな時だからこそ、鏡で自分の姿を確認することで自己を客観的に見られ、気持ちも整えられます」(澁川さん)
リップクリーム
「避難所の食生活では栄養が充分にとれず、唇が荒れやすくなりますから、リップクリームは必需品。私は色付きリップを使っています。マスクを取った時にすっぴんでも顔色が明るくなりますね」(辻さん)
ハンドクリーム
「手指を洗浄・消毒できるハンドクリームです。ベンゼトニウム塩化物が皮膚を消毒して、消毒効果は約4時間持続するそうです。使用感はしっとりもちもち」(辻さん)。
広告