つみれさんこんにちは。いただいたお手紙を読んで、つみれさんはなんとやり手でいらっしゃるのかと度肝を抜かれました。人として魅力的で、頼りになり、女性たちからモテモテの夫を浮気相手から奪還し、人生のパートナーとして支えてくれる覚悟を決めさせている。かなり年下の彼もいて、彼に恋人ができても尚つみれさんとの関係を続けさせている。夫は彼との関係の相談に乗ってくれる。お二人の娘さんは立派に成人されお孫さんまでいらっしゃる……。欲しいもの、失いたくないものをこれだけすべて手に入れることのできるつみれさんは紛うことなき人生の上級者ではありませんか。最早私からお答えさせていただくようなことは何もないような気さえしてきます。
つみれさんがおつらいのは重々承知しておりますが、一旦それはさておきつみれさんご夫婦のあり方だけを見てみると、子育ても無事終わり、人生の後半をともに過ごす夫婦としての最適解を見せていただいているようで、なんだか大変希望が持てます。子育てという一大プロジェクトを通じて、残念ながら夫婦がどんどん恋人でなくなってしまうというのはもう皆様ご存知の通りですが、特に乳幼児のケアという重労働を前にすると、恋人どうこうというより自分が人でさえなくなってしまうという、そんな瞬間が訪れるんですよね。思えば私も子どもたちが赤ちゃんのうちは、いつでも授乳できるようにとほぼ上半身裸、原始人スタイルで生活していました。その辺に転がっているお茶を飲んだり、台所で立ったままご飯を食べたり……。で、こうなるのってなぜか大抵の場合、妻だけなんですよね。ごくまれに、妻と同じ速度で文明人らしさを失ってくれる夫もいるにはいるけれど、おそらくつみれさんの夫は、失礼ながらそのタイプではなさそうです。
こちらが髪を振り乱して文明から切り離されている間に、文明人のままである夫の方は小綺麗な格好をして外で浮気を繰り返している。こんなにも腹立たしい話はないわけですが、一方でそんな不貞野郎どもにも大なり小なり良心の呵責というものがあるようで、たとえ浮気が許されたとしても、後ろめたさや申し訳なさから関係性を健全に戻すことができなかったり、あるいはヤケになってどんどん自分も周りも傷つけたりすることがあるようで(そういうのを見るとつくづくケツの穴の小さい人間が浮気なんかするなと思うわけですが)、そういう意味でもつみれさんの夫は、つみれさんの浮気に内心とても感謝していると思いますよ。つみれさんが浮気し、それを打ち明けることによって、それまでの借りが一気にチャラになったんですから。もちろん、多少はショックを受けられたでしょうが、同時に心の中の雲がすっと晴れて、久しぶりに陽が差したかのような感覚を抱かれたのではないでしょうか。また今現在は、傷ついた妻を救うヒーローとしての自分、という新たな役割に、生き生きされていることとお見受けします。(他人である私から見れば、子育ての大変な時期の、夫の複数回の浮気と、子育てが落ち着いてからの、たった一回の妻の浮気が同等なわきゃない、と感じますがそれはあくまでもご本人同士が決めることですので)
さまざまな困難をともに乗り越え、すっかり家族となってしまったパートナーに、もうかつてのような恋心を抱けない。……でも、恋はしたい。そう嘆く声は、私の周りの夫達、妻達から、しばしば聞かれます。が、いざ現実に婚外恋愛しようとすると、生活の不安を伴う熟年離婚のリスクが重くのしかかる。またつみれさんご夫婦のように公認でやろうにも、相手の反応が怖くて切り出せない。そうやって泣く泣く諦めている人達が決して少なくない中で、結果として望むものをすべて手に入れられているつみれさんは、繰り返すようですが大変、大変素晴らしい手腕をお持ちなのです。ですからまずはぜひ、ご自身の行動力や選択、これまでの歩みに自信を持ってください。
で、妻として母として全くもって最低ではない、むしろ優秀過ぎるほど優秀なつみれさんが、ご自身の能力を正しく認識し、自信を取り戻しさえすれば、自ずと年下彼氏への執着も弱まっていくのではないかと私は思っているのです。が、もしもそうでなかった場合、もういっそのこと「夫と3人で、うちで暮らさない?」と提案してみてはどうでしょう。とんでもなく非常識だけど、常識の枠に留まらない画期的なスタイルを実現してきたつみれさんなら、なんとなくこれだってアリな気がしてきます。もちろん、それでも新しい彼女にゾッコンと言われたら諦めるよりほかないけれど、物は試しです。きっと、こうと決めたら譲らない強さをお持ちなのだろうと思いますので、この際体裁なんて気にせず、最後まで欲しいものを諦めない姿勢を貫き通してみるというのはいかがでしょうか?