くらし

『コドモとマナビ くらべてみよう、今むかし』│ 金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

大人の目を盗んでサボるのが、子どもの仕事!

確か十代の終わり、大人になる途上の時期だったと思う。忌野清志郎が「子どもの頃、大人は不自由だと思ってたけど、実際に大人になったらよっぽど自由だった」みたいな発言をしているのを耳にして、そうなのか!と感じ入った。あれから幾星霜、大人の自由さを実感している。と同時に、窮屈だった子ども時代に大人の目を盗んで悪いことをしたスリルがしみじみと懐かしい。

さて今回の展示は、子どもの権利条約採択30周年を記念するシリーズのひとつ。近世以前、武士や貴族の子には学問の機会が与えられたが、多くの子どもは7歳頃から労働力とみなされていた。人身売買されたり、死んでもお墓を作ってもらえなかったり。中世ヨーロッパでも、7歳になったら仕事を始め、飲酒も恋愛もしていたと本で読んだことがある。大変すぎるよ、昔の子ども。

やがて「子どもを大事に育てよう」という意識が浸透し、江戸時代には寺子屋が盛んになる。いろんな年齢の子が通ってきて、それぞれの課題をやって先生に見せる個別学習方式。明治になっても小学校が整うまでの間は寺子屋が機能していたという。寺子屋の風景を描いた絵には、みんなが真面目に手習いをしている中で、先生の目を盗んで「へのへのもへじ」の落書きをしている子がいて、ホッとする。いたずらしたり、反抗したり、甘えたり……子どもらしい時間が送れる子どもは幸せだ。

世界の子どもたちが学問の機会を持ち、その上でサボったり、遊んだり、冒険できることを祈る。

『コドモとマナビ くらべてみよう、今むかし』
すみだ郷土文化資料館(東京都墨田区向島2-3-5)にて8月30日まで開催中。子どもの権利条約採択30周年の一貫として、江戸・明治時代の寺子屋や学校に関する資料などを展示。TEL.03-5619-7034 9時〜17時 月曜、第4火曜休館 料金・100円

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。

『クロワッサン』1025号より

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