くらし

映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』、若手で蘇ったウディ・アレンのお家芸。

  • 文・山縣みどり

ニューヨークの富裕層出身のギャツビーは、大学で出会ったアシュレーと熱愛中。彼女が大学新聞の仕事で大物監督にインタビューすると知った彼は、恋人とロマンティックな休日を過ごす計画を立てるが……。

地方のさえない大学で過ごすギャツビーにとって、アシュレーだけが心の支えに。

一時期、活動の舞台をヨーロッパに移したが、『女と男の観覧車』で再び故郷ニューヨークに戻ってきたウディ・アレン監督。新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』は、彼の才能を世界に知らしめた『アニー・ホール』や『マンハッタン』を彷彿させる小粋な物語だ。

純朴で流されやすいアシュレーと、恋人に予定を狂わされたギャツビーはそれぞれ予想外の出来事に遭遇する。アシュレーの物語がドタバタ喜劇風なのに対し、元恋人の妹チャンと再会したギャツビーのパートはアレンお得意のスクリューボール・コメディだ。ミスマッチな男女が反論しながら惹かれ合うのはお約束だが、雨降るマンハッタンで交わされるギャツビーとチャンの会話のお洒落なこと!

主演のティモシー・シャラメとエル・ファニング、セレーナ・ゴメスはアレン監督のテイストを充分に理解した好演を見せる。ツイード・ジャケット&チノパン姿のギャツビーがアレンの分身なのは明らかで、シャラメは監督のやや神経質な話し方をマスターした上にシナトラの弾き語りまで披露。シャラメのファンへのサービス? 自身を美化しすぎな感はあるが、そこは監督の特権だ。

待望のインタビューに心躍るアシュレーは、いつしか監督のカウンセラー的な存在に。

そして、もう一人の主役(?)がマンハッタンだ。アレンも久々の地元撮影がうれしかったようで、こよなく愛する一流ホテル「カーライル」や「ピエール」はじめ、メトロポリタン美術館やセントラルパークをロケ地に選択。新型コロナの影響で旅行ができない今だから、本作でバーチャルNY旅行を楽しむのも一興だろう。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

故郷を案内する予定だったギャツビーだが、雨降るなかで彼女と離れ離れに。
トラブル続きのギャツビーの前に元彼女の妹、チャンが登場、災難が加速する……。

監督、脚本:ウディ・アレン 出演:ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セレーナ・ゴメスほか 7月3日より東京・新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開。longride.jp/rdiny/
(C)2019 Gravier Productions, Inc.

『クロワッサン』1024号より

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