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【紫原明子のお悩み相談】モラハラ傾向のある彼と距離を置くべきか悩みます。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが、読者のお悩みに答える連載。今回は年上の彼との関係に悩む女性からの相談です。

<お悩み>

紫原さん、こんにちは。いつも興味深く拝見させていただいております。
私にはひと回り以上年上の彼氏がいます。彼は普段は優しく私を好きだというアピールをしてくれますが、自分の理想とする女性とかけ離れた姿を私が見せると怒り、厳しい口調で「君は努力できない人間だから」と言ったり、モラハラ傾向にあります。そういったストレスもあり別れようとした矢先、コロナの影響で彼の仕事が不安定になりました。彼には頼れる家族や友人もなく、日々疲労感に苛まれながら仕事しているので「コロナで辛いうちは」と家事などサポートしていたのですが、時折感情的になられること、彼のうつ傾向を心配して病院を勧めても拒否されること、ネガティブな気持ちが私にもうつってお互い気分が沈んでしまうため、彼に会うことが正直しんどいです。私も気分が沈んでしまう旨を伝えると「どうしても助けて欲しいのにそんなに嫌なんだ」と高圧的に悲しまれます。
私に依存してる彼と、一番辛い時に距離を置くのは酷いとは思いますが、我慢して彼の面倒を見れるほどの器が自分にないことも分かってます。一体どうすればいいのでしょうか? とりとりめもない話ですが読んでいただきありがとうございます。どうか私に対しても彼に対しても紫原さんが思ったことを率直にお話しいただければと思います。

(まり/コンサルタントをしている24歳です。)

紫原明子さんの回答

まりさん、こんにちは。
まりさんはとっても聡明な方ですね。 一回りも年上の男性にモラハラを受けたとき、それをきちんとモラハラだと理解し別れまで決意するというのは、簡単なようで案外難しいことです。何しろそういう相手というのは往々にして社会経験の長さを盾に、自分のルールが世の常識といわんばかりの態度で接してきますので。女性の方が「年長者が言うのだからそういうものか」と素直に受け入れれば受け入れるほど気を良くして、どんどん傲慢さを増長させます。すると女性はどんどん自分の判断に自信が持てなくなってきてしまいますが、男性にとってはますます好都合です。なぜなら相手が自信を失いかけていたほうが付け入りやすい。自分のめちゃくちゃな論理が受け入れられやすいからです。

誰がどう見ても赤いリンゴを青いと彼が言う。彼が言うなら青なんだろう、と思う。そんなおかしな状況がまかり通ってしまうのがモラハラ常態化の怖いところです。ですので、モラハラをモラハラと認識できる冷静さを失わなかったまりさんは本当に立派です。今後彼とどうするべきかという点についても、ご自身の考えにどうか自信をもってください。

これは憶測ですが、一回りも年下の恋人であるまりさんに高圧的に接してくる彼は、普段から自分の力や存在が、社会から今ひとつ正当に評価されていないと感じているのではないでしょうか。まりさんを否定し、まりさんを傷つけることで満たされない自分をごまかしている。自分の言葉はたしかに他者に影響を与えている、自分にはそれだけの力があると思い込みたいのではないでしょうか。けれども当然ながらそれは、彼自身の抱える問題に対して何一つ本質的な解決にはなりません。やりがいのある仕事に就きたいとか、もっと高い評価を得たいとか、他者から愛されたいとか、彼が本当に望むことが何かを明確にし、それが得られていない現実を直視しなければ、彼はきっと、今後どんなにまりさんを傷つけたって満たされません。

このまま二人でいる限り、彼にとって社会はどんどん憎く、恐ろしいものとなり、自分の思うままになるまりさんと二人だけの閉じた世界に、より長くこもろうとするかもしれません。その状況が二人にとって健全であるはずもなく、すっかり閉じきってしまう前に、彼にはなんとか自分の問題と向き合ってもらう必要があります。だけど、彼がまりさんの存在を盾に現実逃避しているのであれば、まりさんが側にいる限り、問題と向き合おうとしないでしょう。つまり今、まりさんが彼と距離を置くことは、まりさんだけでなく、彼のその後の人生にとっても必要なことだろうと思うのです。

ただ、彼の精神状態によっては、別れ話が難航するかもしれません。何しろ彼にとってまりさんを失うことはヘビースモーカーが禁煙するのと同じことなので、しばらくの間、禁断症状が続く可能性があります。程度によっては、最後にとんでもない悪あがきを見せてくるかもしれません。そういった場合には、彼への情けより何より、まりさん自身の心身の安全を守ることを最優先にして、必要に応じて第三者に間に入ってもらうなどしてください。

彼がまりさんと別れたあとにきちんと自己と対峙し生き方を変えられるかどうかは正直、今のところ五分五分だと思います。もしかしたら、最後のチャンスとして自分を救うきっかけにしてくれるかもしれない。でも、もしかしたらやっぱりまた、自分をごまかすのに丁度いい相手を選んで、まりさんにしたのと同じように依存するかもしれない。いずれにしてもそれは彼自身の問題です。どんな結果になろうと、まりさんには関係のない話です。

通院が必要なら通院する、仕事のストレスがあるなら改善する道を探る。彼があれこれ模索した先で、もしきちんと自分自身を受け止める強さを養えたとしたら、そして再び出会ったそんな彼が、まりさんにとって再び魅力的に映ったとすれば、そのときにまたパートナーになったっていいのです。

何度も言うようで恐縮ですが、幼稚な彼よりまりさんの方が圧倒的に大人なので、ご自分の判断に、どうか自信を持ってください。自分の理想とかけはなれた姿を見せたまりさんを叱責していた幼稚な彼に、今のあなたは自分の理想とかけはなれているから一緒にいられないと伝え、自立した大人同士のパートナーシップが何たるかを、ぜひとも教えてあげてください。彼に最後の最後に聞く耳があれば、長い目で見たとききっとこれも、彼のためになるだろうと思います。

イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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