くらし

コロナ後の日本についてゆっくり話そう。【パトリック・ハーランさん×長塚圭史さん 対談】

  • 撮影・高橋マナミ スタイリング・水野秀彦(パックン) ヘア&メイク・橋本 杏(パックン)、谷口ユリエ(長塚さん) 文・澁川祐子 撮影協力・プーク人形劇場

再び幕が上がる時にはやりたいものだけが残る。

長塚 将来的には、演劇を見たことがない人たちを劇場に呼ぶ仕掛けを地道に考えて、この場を開かれた状態にもっていく必要があると思っています。昔の芝居小屋じゃないけれど、「なんかやってるな」って気楽にのぞきに来れるような。どんなにこの難局を乗り越えて再開したからといって、そんなにいい未来が待っているはずはないんです。それよりみんな居酒屋やボウリング場とか、もっと楽しいところに分散していく。けれど、そうした場所と同じぐらい開けた場になるようにもっていきたいですね。

パックン 14世紀のペストの後、ヨーロッパではイタリアを中心にルネサンスを迎え、文化的な復興を遂げます。今回のコロナの後も、そうした可能性はあると思いますよ。

長塚 この厳しい状況下で来年以降の企画を考えるにしても、なんとしてでもやりたいと思うものだけが残るでしょうね。過去の作品も見直して、一つ一つの作品の輪郭をクリアにしていく必要があると思うんです。やる側の表現の質、それから見る側の感度も上がることがわかっているから。

パックン 確かに! 1年ぶりの舞台となれば、それはもう磨きに磨かれていると。みんながものすごい期待するからハードル高いぞ!

6月に公演を控え、現在は思案中だという長塚さん。「配信など別の方法も考えています」

長塚 生半可では収まらないと思いますよ。くだらないものを作るんだったら、本気でくだらないものを作る。劇場のセットを全部なくして、極限までシンプルを突き詰める人もいるかもしれないし、逆にゴテゴテに飾って、いっぱい踊っていっぱい飛んでやろうと思う人もいるだろうし。それぐらい熱が高まると思います。

パックン さらにパワーアップして戻ってくる。

長塚 そうですね、演劇もお笑いも。誇りをもって休み、再開した時には、劇場を「こういうものが見られる時代は幸福なんだ」と思ってもらえる発信地にしていきたいですね。

「より強力におもしろくなって舞台に帰って来る日を楽しみにしてます。」パックン

「茨の道ですが、演劇の価値を一人でも多くの人に伝えていきたいです。」長塚さん

パトリック・ハーラン(パックン)さん●お笑い芸人。1970年、アメリカ生まれ。ハーバード大学卒業。’97年にお笑いコンビ「パックンマックン」結成。司会のほか、大学講師も務める。

長塚圭史(ながつか・けいし)さん●1975年、東京都生まれ。’96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ。2019年、神奈川県芸術劇場芸術参与に就任。

『クロワッサン』1022号より

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