くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】子供のことを話したら恋人が態度を変えました。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は恋人に子供の存在を告げると態度を変えられてしまったシングルマザーからの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

いつも楽しく拝見させて頂いてます。山田ルイ53世さんの言葉選びや相談者様への優しいお気遣い、文章を読んでいてほっこり優しい気持ちになれるのと同時に、クスッと笑えたりユーモアを感じて幸せになります。ありがとうございます。
私は娘1人のシングルマザーです。
心許せる、全力で頑張らなくてもいい居場所が欲しくて、パートナーが出来ればなと思っております。
しかしお相手の男性に子供がいる事を伝えると、犯罪者を見る様な汚いものを睨む様な目で見られたり、手のひらを返す様なあからさまな態度を感じた事もあります。
しかし私としては、最初から“子持ちの女性でもいいよ”と公言してる方はどうしても躊躇してしまいます。
【子持ちを受け入れてる俺、器デカイだろ】と自分を周りに良く見せる為のパフォーマンスに利用されてる気がして、腑に落ちません。
かと言って、後から伝えると上記の様なありさまです。
山田ルイ53世さんは、初めから伝えるのと後から伝えるの、どちらがいいと思われますか?
コロナで大変だとは思いますが、どうかお身体お気をつけてお過ごし下さい。

(牛タンと家系ラーメンをこよなく愛する母/女性/看護師30代、小学4年生の娘と暮らすシングルマザーです。)

山田ルイ53世さんの回答

看護師だという牛タン母(略)さん。
医療従事者の方に、
「コロナで大変だと思いますが……」
と気遣っていただくとは恐縮です。
日頃の感謝と尊敬の念を込め、
「一番大変なのはそっちだろ!」
とツッコんだところで本題へ。

「お付き合いする相手に、シングルマザーであることを伝えるタイミング」についてお悩みとのことですが、相談者がかつて体験したという、“お相手の方達”の態度には、正直筆者も“ドン引き”しています。
いや勿論、
「それは聞いてなかった!」
「なんで最初から言ってくれなかったの?」
と戸惑い、動揺するのは、単純に“知らなかった”という点で当然のこと。
2人の仲が深まってから、
「実は私……」
と切り出された先方の身になれば、
「……嘘ついてたの?」
とショックを受けても仕方がない。
ある意味、常識的な反応の範疇と言えますし、その人間性をとやかく言う気にはなれませんが、「犯罪者や汚いものを見るような目」や「あからさまな手のひら返し」となると、人ぞれぞれとはいえ、あまりに時代錯誤で差別的。
もはや滑稽かつ憐れと言っても良い。
筆者が相談者の立場なら、
「……こいつ、マジか!?」
とむしろ笑ってしまうかもしれません。
これはもう、ロクな相手ではなかったと諦め、ご自分の見る目の無さも含め、苦笑いするしかないでしょう。

どうしても腑に落ちないと仰っている、「最初から“子持ちの女性でもいいよ”」と公言している方であれば、
「へー、そうなの?全然いいよー!オッケー!」
と全く動じない可能性もありますが、“一切噛まずに丸飲みする”ようなそのリアクションに、(この人、真剣に考えているのかな?)
と別の意味で不安を覚えそう。
おそらく、佐賀の伝統芸、“餅すすり”をやらせても名人レベルだと思われます。

そもそも、“子持ちの女性でもいいよ”などという台詞は、「シングルマザー」=「マイナス」と言っているのと同じこと。
ついでに言うと、“子持ち”というのも、
「わしゃ、シシャモか!」
とツッコみたくなる。

ただ一方で、お付き合いしていくうちに、
(あー、悪気はなかったんだな……)
とか、
(バカなだけで愛すべき人だ……)
と相談者自身、前向きな気持ちになるケースもないとは言えない。
もしかすると、
(“周囲の”じゃなくて、“私の”気を引きたかったんだ!)
という発見が待っているかもしれません。

……などと色々考えると、もはやタイミング云々の問題でもないような気がしてきました。
ここはやはり、「先にお伝えする」とご自分で決めてしまった方が、良いのかなと。
お相手のというより、相談者のために、です。

理由は1つだけ。
シングルマザーであること、つまり、「娘さんを育てている」ということを、「言うか言わないか」、「いつ言うのか」などと、あたかも何かの駆け引きのカードのように俎上に載せ、意識して暮らしていくのはどうなのだろうと思うからです。
娘さんは、“条件”ではない。
勿論、相談者がそんな風に考えていないことは重々承知。
分かっています。

ただ、それが明白なだけに、構図としてそうなってしまっていることは不幸だとも思う。
万が一、まだ小4の娘さんが“そう受け取ってしまう”ようなことがあっては、彼女を愛してやまない相談者としても不本意でしょう。
何より、相談者のパートナーになる方は、娘さんにとってもパートナー。
筆者などに言われるまでもないでしょうが、「心許せる、全力で頑張らなくても良い居場所」には、娘さんの笑顔が欠かせないはずです。

全くの余談ですが、筆者が昔からお世話になっている先輩芸人の方が、2年ほど前に結婚されました。
キッカケは奥様のご懐妊。
俗に言う、“できちゃった”というやつですが、当時交際相手だった奥様から妊娠の事実を告げられるまで、先輩はご自分のことを、「38歳、イベンター」と説明しており、いざ結婚しようという段になって、
「実は……」
と50歳(当時)の売れない芸人である事実を初めて明かしたそうです。
いや全く酷い話。
人類史上稀にみる“サバよみ”、普段は“越後のちりめん問屋”と名乗る、水戸黄門レベルの肩書き詐称ですが、今では家族3人幸せに暮らしておられます。
良い悪いは別として、“ちなみに”ですが、そんなこともあります。
お幸せに。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
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