【紫原明子のお悩み相談】どうしたら自信を持って生きていけますか。
<お悩み>
こんにちは。私は高校3年生の18歳です。私の悩みは2つあります。それは自信をなくしがちなことと人に影響されやすいことです。私はこの2つの悩みは繋がっていると思っています。例えば自分が素敵だなと思った人の考え方や仕草を真似してみたりします。でもこれは本来の自分ではないし、なんとなく真似することでどこか自分の自信の無さをカバーしているように思います。昔は自分に自信を持っていましたが、高校生になると周りの目を気にすることが多くなりました。容姿に自信がないというよりも、気が弱いことで自信がないのかなと思います。 もっと自信を持って、人に影響されない人になりたいです。自信の付け方、堂々となれる考え方を教えてください!
(にゃー/高校3年生)
紫原明子さんの回答
にゃーさんこんにちは。
唐突に恐縮ですが、18歳にして数あるメディアの中からあえてここクロワッサンonlineの、テレビでよく観る山田ルイ53世さんでもない紫原明子に相談を寄せてくるにゃーさん、あなた一体何者なんです……? 少なくとも只者ではない気配がそこかしこからぷんぷん漂ってきてます。私が言うのもなんですが、私を認知し、私に相談を寄せてくださる人っていうのは大体1回か2回、人生で精神的な大事故を起こして二進も三進もいかなくなって長期療養した経験あり、みたいな人たちなので、にゃーさんは一体どこでこのインターネット辺境の地であるところの私に辿り着いてくださったのでしょうか。気になって今夜は眠れません。
それはそうと、にゃーさんのお悩みです。自信をなくしがちで、人に影響されやすいと悩んでいらっしゃるんですね。そしてその二つには関係があることまで、ご自身でちゃんと分かっていらっしゃる。誰かの真似をすることで自信のなさをカバーしようとされているのかもしれないし、そもそも自信がないからこそ、誰かの真似をしたいと思うのかもしれません。この分析までできているという時点でやっぱり只者ではない。そんなにゃーさんに子供だましは通用しないと覚悟を決めて、率直に私の見解をお話します。
結論から申し上げますと、人に影響されず、堂々とした人になっては、ダメ。ダメなのです。なぜなら、自信をつけて、人の影響を一切受けなくなって、堂々としてしまったら、その時点でにゃーさんが完成しちゃうからです。完成してしまうと、にゃーさんは今のにゃーさん以外の人にはなれなくなってしまいます。決して、にゃーさんが子供だから完成しちゃいけない、というわけではなく、それは30歳、40歳、50歳になっても同じです。少なくとも私なら、できるだけ完成してしまいたくないな、と思うのです。というのも、私は飽き性なんです。飽きたときに、新しい自分がいる、自分が今とは違う誰かになれる、という希望がなければ、絶望して生きていけなくなってしまうと思うのです。
服はいくらでも着替えられる。でも、着替えるには自分の意識をそのように働かせていなければなりません。あの人みたいな服を着てみたい、と思わなければ、あの人みたいな服を着た自分にはなれません。素敵な誰かに嫉妬してみたり、少しだけ真似してみたり、それに比べて私はと自信をなくしてみたり。そんな風に、何か足りず、人に影響されがちな未完成な自分でいるというのは、一見悪い事のようでいてその実、いくらでも新しい自分になり得る、大きな可能性を有している証拠なのです。
また十年、二十年と、ああなりたい、こうなりたいとあちこちに手を伸ばして、色んなものを見たり聞いたりする中で、どんなに完成したくないと思っても、不思議なことにちょっとずつ、妥協できないもの、譲れないもの、許せないものが出てきます。これがうまくいけば、さながらしなやかな筋肉のように、意識のスムーズな動きをサポートしてくれるものになるし、うまくいかなければ首や肩の凝りみたいに、意識の動きを妨げる厄介なものになります。当然、どっちかと言えば筋肉のほうがいいんだけど、やっぱり凝りだって生活にはつきもので、なかなかうまく避けることもできません。結局のところ、筋肉でも凝りでも自分の体なので、遅かれ早かれ「しょうがない、これで生きていくしかない」と割り切るよりほかなくなってきます。そんな風に私達は結局、年齢とともに、嫌が応でもちょっとずつ、完成に近づいてしまうのです。……諦める、という形で。もちろん、これはこれでたしかに楽になるし、楽しさもあるんです。でも、遅かれ早かれ完成すると思えばこそ、抵抗できるうちは極力、完成に抵抗して、どんどん新しい自分を見つけていかれると良いのではないかと、私は思うのです。
……で、もっと言うとこれは、降ってきた刺激をずしっと受け止めるという、どちらかと言えばやや受け身の姿勢です。実は、これよりもっと攻めの姿勢で、新しい自分と積極的に出会いに行く方法もあるのです。それというのは、端的に申し上げますと、「黒歴史を量産する」という方法です。なかなか勇気がいることではあるけれど、極めて効果的な方法なんです。黒歴史というのは普段、あまりにも世の中から嫌われているけれど、よくよく考えれば自分でない何者かになろうと背伸びをしなければ決して刻めない、勇敢なる戦いの歴史です。思い出すだけで死にたくなるほど恥ずかしい。でも、そうやって自分らしくないものに手を出していくことをしなければ、そうそう目の覚めるような新しい私には出会えないのです。
にゃーさんにはこれから先、無数の選択肢が待っています。社会は今ひとつ成熟してないのできっと色々と生きづらいことも出てくるけれど、建前上は一応、何をするのも、どう生きるのも自由です。大学進学、就職と、今後いくつもの岐路に立たされるでしょう。そんなとき、誰かの目を気にして自分の可能性を広げようとしてこなかった人、すなわち黒歴史の数が少ない人ほど途方に暮れてしまうのです。なぜなら新しい自分に出会うことを避けてきているので、自分は何が好きで何が嫌いか、何が自分にフィットして何がフィットしないのかといった、自分のことがさっぱり分からないからです。
だから、自信がないことを悪いことだとは決して思わず、自信がない自分をそのまま認めてあげてください。なぜならそれは可能性に満ちた自分なので。
そして、その気持ちに正直になって、ぜひどんどん他人の真似をしてください。で、余力があればより過激に、火が出るくらいまでその道を突き詰めたりしてみてください。今の自分でなく、さらに新しい私になろうとする。その行為は未来のために大正解なので、誰かに影響され、真似をしている自分を見つけたら「よし、いいぞ!」と自分を褒めてあげてください。そして、そうやって変身した自分が心地いいか、心地よくないかには、きちんと意識を向けてください。
いろんな場所に旅した末に本当に居心地の良い場所にたどり着く。そんな風に、いろんな自分を楽しんだ末に見えてくる本当に居心地の良い自分。そんな自分こそきっと、嘘偽りなく堂々としていられる、にゃーさんの理想とする自分なのだろうと思います。
紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter
広告