世界が絶賛したアニメ、Netflix『失くした体』は切ない喪失の物語 。【エディターのおうち時間】
文 クロワッサンオンライン
「体を求めて街をさまよう切断された手と、ひとりの青年の心に芽生えた淡い恋心。パリを舞台に、恋愛と謎が交錯する不思議な冒険を描いた、繊細なアニメ作品。」という、Netflix公式サイトに記載された『失くした体』の作品概要だけ読むと、冒頭の「切断された手」をさらりと流せば、よくあるラブストーリーと勘違いしてしまうかもしれません。
しかし、冒頭の「切断された手」こそが実はこの作品の主人公。恋愛は、この複雑すぎる作品のパーツの一部でしかありません。よりによって「手」が主人公なんて! なんという不思議設定でしょうか。
それもそのはず、この作品の原作は、2000年代初めの女子たちを熱狂させた、あの不思議ちゃんが主人公の映画『アメリ』の脚本家ギョーム・ローランが書いた小説なのです。
正直に言えば、『失くした体』は決して明るい話ではありません。というか、むしろ悲しく、切なく、悲痛な物語といった方がいいでしょう。
そこには、過酷な現実があり、叶わない恋があり、不平等があり、耐えがたいほどの不運がある。けれども漆黒のような暗さの中に時折ささやかな幸せの記憶が差し込まれ、そのアップダウンが観ている私たちの心を激しくゆさぶりもする。
音楽も映像も本当に素晴らしく、観終わったあとは、しばらく茫然としてしまったほど世界観に引き込まれました。いやぁ、いいもの観た……。
のぐぽん
『クロワッサン オンライン』ディレクター。戦国武将から昭和の名建築まで、ちょっと昔のものにときめきがち。美しい映像とキザなセリフが多い映画が好き。最後にガッツポーズするようなハッピーエンドよりは、「あのラストの意味は…?」と考えこんでしまうタイプの作品に弱い。ネットフリックスでは最近ドキュメンタリーを色々漁り中。スパイものへの関心も高まっております。
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