【観てよかったもの】大林宣彦監督作品で一番好き。『異人たちとの夏』
写真・やまごや
映画監督の大林宣彦さんが4月10日に亡くなりました。ご冥福をお祈りします。
2017年の東京国際映画祭の舞台挨拶で「130歳まで映画を撮り続ける」と言っていて、本当にそんな気がしていましたのでびっくりしました。
私がこの映画祭で見た『花筐』だけでなく、『HOUSE/ハウス』や『狙われた学園』、『時をかける少女』でおなじみの“尾道三部作”、『青春デンデケデケデケ』など数々の名作を生み出してくれました。中でも私が一番好きなのが山田太一さんの小説を映像化した『異人たちとの夏』です。
おじさんシナリオライターの前に死別した両親が現れてひと夏一緒に過ごす、というのがざっくりとしたあらすじです。物語の終盤に両親とお別れするシーンが、大林監督の真心が全開に感じられて、何度見てもその度に強く引き込まれてしまいます。
主人公のおじさんが両親を浅草・今半へ連れて行きます。中庭が見えるお座敷席でセミの鳴き声とすき焼きがぐつぐつする音が心地いい。おじさんは両親に「いっぱい食べて」なんて言うのですが、だんだんと両親の姿が消えていってしまう。その時の両親のセリフ
「お前はいい息子だ」
「あんたのことを自慢に思っているよ」
「体を大事にね」
など一つ一つが胸に突き刺さります。というか映像を見ながら書いていたらまた泣けてきました。
ちなみに主人公のおじさんはこの夏中、両親に甘えっぱなし。このシーンでも「僕はいい人間じゃない」とか、「ロクな仕事をしてこなかった」とか弱音を吐きまくります。それに対してお父さんが
「自分をいじめることはねぇ。てめぇでてめぇを大事にしなくて誰が大事にするもんか」
と。このセリフが本当に好きで、このセリフに何度も助けられて大林監督ありがとう!と、思わずにいられません。昨日もこのシーンで大泣きしてしまいました。
弱音を吐いたり、暗い話っておいそれと人に話せないと思いませんか?もし、弱音を吐きたくても吐けない、という時はこの映画を見てみてください。私は元気が出ました。
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そういえば『異人たちとの夏』のすき焼き、これとても美味しそうなんです。お母さんが綺麗に取り分けてくれて。
今晩はすき焼きを作る気力がわかないのでこれを夕飯にして寝ます。
やまごや
『クロワッサン オンライン』エディター。年に数回の旅行が生きがい。普段は部屋にいることが多いので部屋を快適にしてくれるアイテムを集め中。今年の目標は体を鍛えて腕を2倍の太さにすること。