家計簿で始めるお金の「見える化」。ファイナンシャルプランナー 深川恵理子さんの節約ワザ。
撮影・山本ヤスノリ 文・アマミヤアンナ
「お金のことが苦手なんです、という人は、お金も暮らしも『見える化』できていないことがとても多いんです」
と話してくれたのは、年間100件以上の個別相談を受けるファイナンシャルプランナー、深川恵理子さん。曰く、保険に入っていても、保険会社の名前すらあやふや、という人もざらだという。お金を「見える化」することで、生活の不要な部分が浮かび上がり、自然と意識や行動が節約に向かう。
自身は、結婚してから家計簿をつけ始め、10年後に5500万円の新築マンションを現金で購入した経験をもつ。
「夫婦ふたりの生活ですが、お金については私が100%イニシアチブをとっています。エクセルで表を作って家計簿をつけ始めましたが、使っているうちについ項目や数式を増やしたりして、どんどん複雑にしてしまって。マンションの購入後、自分としては目標達成したこともあって、家計簿をやめてしまったんです。同じように、市販の家計簿や家計簿アプリは途中で挫折してしまう方は多いですが、やはり複雑だからだと思います。家計簿って、節約というよりお金の動きを把握するためのもの。毎日記録することが大切だから、シンプルなほうがいいんです」
面倒くさがりやの人こそ今から貯まる仕組み作りを。
深川さんが家計簿をやめていた期間は、10年間とけっこう長い。家計簿をやめたとたん、お金の出入りが気にならなくなり、積み立てなど強制的に引き落とされるもの以外はまったく貯まらなくなった。家計の細かい部分が見えなくなり、徐々に漠然とした不安がつもり始めたころ、母のある言葉がきっかけで家計簿を再開したのだそう。
「実家に帰ると、80歳になる母が相変わらず毎日、家計簿をつけているわけです。母の時代はお金を貯めることがあたりまえで、預けたお金もどんどん増えていった。だから、家計簿をつけることが楽しかったんでしょう。あるとき母が“家計簿をつけないと気持ち悪い”と言ったのを聞いて、自分は習慣にできずにやめたことがなんだか悔しくて、家計簿を再開したんです」
家計簿をつける時間は、一日2分。財布の現金の出入りは、エクセルで作った『お財布スッキリシート』で管理を。その日手にしたレシートを見ながら、使った金額をそれぞれの項目に入力し、財布の中の現金を数えて、家計簿の残高と合っていれば終了。未入力をためないのが続けるコツだ。
「家計簿をつけ始めると、たとえばお金を使っていない日に、帰りにスーパーに寄ろうかと考えたとき、“ここでお金を使わなければ、家計簿をつけなくても済む”と思うようになります。私のような面倒くさがりの方は、家計簿が抑止力になり、スーパーに行く回数が減るなど、行動が自然に節約する方向に向かっていきます」
人生100年時代がやってくるという。無理なく貯まる仕組みを作るのがアラフィフ女性の課題。最後までお金に困らないよう準備をしたいものだ。
深川恵理子さんの、お金&人生年表
●1979年(20歳)
短大卒業後、メーカーに就職。
●1983年(24歳)
結婚。メーカーを退職し、パート勤務へ。
●1987年(28歳)
離婚。米アパレルブランド「ブルックス ブラザーズ」名古屋店に勤務。
●1989年(30歳)
再婚。東京へ転勤になり、社長秘書や経理職などを経験。
●1990年(31歳)
2度目の離婚。
●1992年(33歳)
家計簿をつけ始める。
●1993年(34歳)
再々婚。資産を「見える化」し、手探りで貯蓄をスタート。
●2002年(43歳)
ローンを組まず、都内にマンションを購入。家計簿をつけるのをやめる。
●2005年(46歳)
「ブルックス ブラザーズ」銀座店に異動。マネジメントや販売などを経験。
●2008年(49歳)
外資系保険会社「アリコジャパン」のスカウトを受け、転職。保険の営業に。
●2012年(53歳)
80歳になっても家計簿をつけ続けている母を見て、家計簿を再開。
●2015年(56歳)
ファイナンシャルプランナーとして、
「アルシアコンサルティング」に入社。2020年(61歳)で6年目となる。
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