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『貝の建築学』│ 金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

100種の巻き貝を構造物として愛でる。

『貝の建築学』│ 金井真紀「きょろきょろMUSEUM」

昔、先輩の家に飼われていた猫の名が「毛虫」で、わたしは密かに憤慨していた。猫に生まれて毛虫とは。競馬界には「モチ」とか「イセエビ」と名付けられた馬がいて、それもモヤモヤする。たぶん本人(馬)はぜんぜん気にしてないだろうけど。

さて、貝の建築学。展示はひと部屋に収まるこぢんまりしたものだったが、そこには発見が溢れていた。まず気になったのは名前だ。貝のくせに「イモ」だの「ムシ」だの「コオロギ」だの。面白すぎる。サソリガイは確かにサソリっぽかったが、あとはなぜその名が付いたのだろう。

なんて騒いでいるうちに、佐々木猛智(たけのり)先生(今回の展示責任者。専門は動物分類学、古生物学)が登場。先生と一緒に改めて展示を見てまわり、ほとばしる貝への愛と知識に圧倒された。貝は世界で最低でも10万種いる。最高齢の貝は500歳。タカラガイの表面がつるつるしているのは、海中にいるとき外套膜で体全体を覆っているから(オーバーを着てる貝)。クマサカガイは周囲の石や貝を拾って体にくっつけている(アクセサリーをする貝)。ホネガイの華麗に増えていく突起物のデザインは、コンピュータでも作り出せない……。あぁ、同じ地球に住みながら、わたしはあまりにも貝のことを知らな過ぎる(願わくば、わたしのような無知のために、こうしたエピソードを貝と一緒に展示してほしい……)。

佐々木先生が「巻き数が多い貝が美しくて好きです」と嬉しそうにおっしゃったのが印象深い。「巻き数」という専門用語も、いいねぇ。

『貝の建築学』
東京大学総合研究博物館 小石川分館(東京都文京区白山3-7-1)にて3月15日まで開催中。建築物としての観点から、形の多様性や統一性がわかる世界各地で収集した貝殻標本を多数展示。 TEL.03-5777-8600 10時~16時30分(入館は16時まで) 月・火・水曜休館(祝日の場合は開館) 無料

金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。

『クロワッサン』1014号より

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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