くらし

ハンガリーの2大美術館の粋が集結。国立新美術館 『ブダペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年』

  • 文・知井恵理
シニェイ・メルシェ・ パール 《紫のドレスの婦人》1874年 油彩/カンヴァス ブダペスト、ハンガリー・ ナショナル・ギャラリー

「ドナウの真珠」と称され、世界遺産にも登録されるほど美しい街並みを誇るブダペスト。そのハンガリーの首都にそびえる2大美術館、ブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーの作品を厳選したのが本展だ。

「ヨーロッパとハンガリーの美術の歴史を紐解ける130点の作品から、約400年の歩みをじっくりと体感していただけると思います」(国立新美術館主任研究員・宮島綾子さん)

第一章では、ルネサンスから18世紀までのヨーロッパ美術を展示。なかでも、イタリア美術やスペイン美術、ドイツや黄金時代のオランダに代表される北方絵画が充実。

「エル・グレコの『聖小ヤコブ』は輝くような幻想的な背景や、窪んだ目元、尖った耳などの細部にエル・グレコならではの大胆な筆致を堪能できる貴重な作品です」

第二章は、19世紀と20世紀初頭の作品が並ぶ。65点中35点がハンガリー絵画で、国民的人気作品も登場。

「シニェイ・メルシェ・パールという作家の『紫のドレスの婦人』です。ドレスの紫色と草むらの黄緑色の補色効果を狙って描かれた革新的な作品で、当時の画壇ではあまり評価されませんでしたが、現在はハンガリーの人々から広く愛されています。向かいに展示したルノワールの肖像画と見比べるのも一興です」

パリを拠点として国際的に活躍したムンカーチ・ミハーイの『フランツ・リストの肖像』は、最晩年の音楽家の厳格な表情が描かれた作品。かと思えば、リップル=ローナイ・ヨージェフの『赤ワインを飲む私の父とピアチェク伯父さん』は、物憂げな2人のたたずまいがどこかユーモラスでもあり、一口にハンガリー絵画といっても実にバラエティ豊か。

「ハンガリーの作家を知る人は少ないと思いますが、その分、作品そのものの魅力を純粋に味わえるよい機会だと思いますので、自由に楽しみながらハンガリー絵画や作家の魅力を発見してみてください」

リップル=ローナイ・ ヨージェフ 《赤ワインを飲む私の父と ピアチェク伯父さん》1907年 油彩/厚紙 ブダペスト、 ハンガリー・ナショナル・ギャラリー
オーギュスト・ルノワール 《少女の胸像》1895年頃 油彩/カンヴァス ブダペスト国立西洋美術館
エル・グレコ 《聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)》1600年頃 油彩/カンヴァス ブダペスト国立西洋美術館

『日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念 ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵   ブダペストーヨーロッパとハンガリーの美術400年』
〜3月16日(月)

国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2) TEL.03-5777-8600 営業時間:10時〜18時(金・土曜〜20時、入場は閉館30分前まで) 火曜(2月11日は開館)、2月12日休館 料金・一般1,700円 https://budapest.exhn.jp

画像はすべて(C)Museum of Fine Arts, Budapest – Hungarian National Gallery, 2019

『クロワッサン』1013号より

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