富山にワイナリー? 知らない人はそう驚く。東に富山湾を望む標高180メートルの里山。そこにはかつて耕作放棄地がひろがっていた。
「氷見(ひみ)で鮮魚の仲卸をしていた当社の社長の弟がそこをワイン畑にしようと言い始めた。何の知識も経験もないのに」(『釣屋魚問屋』飯田健児さん)
そんなものは素人が手を出したってうまくいくはずがない。周囲の失笑を尻目に4000本の葡萄の木を植樹したのが2007年。それが今では年間に2万5000本ほどを出荷する、『セイズファーム』としてワイン業界に名を轟かせる存在となった。
「年に2万5000本は決して多い数字ではありません」
が、葡萄の栽培から醸造まですべてを自分たちで賄う、いわゆるドメーヌ方式では、これぐらいが限界である。
「コンセプトは、海のそばで造る、氷見の魚に合う、ワインです」
耕作放棄地に開いた葡萄の恵み。晴れた畑は冬も意外に陽射しが暖かい。